国民の98%が普段と変わらぬ生活

 日本では、今回の黄色いベスト運動により、フランスは大変なことになっていると感じる人も多いと思います。メディア映えする暴動シーンをはじめ、現場の状況や政府の対応を断片的に伝える報道が多いので、無理もありません。

 しかし、実態は大きく異なります。さまざまな情報を組み合わせて推定できる範囲ですが、国民の98%は、特に変わらぬ日常生活を送っていると思われます。残りの2%(110万人程度)は、デモ参加者、デモの影響で、一時閉鎖や事業悪化を招いた商業施設、飲食店、宿泊施設等の経営者と時短や勤務場所の変更を余儀なくされた従業員等です。

 また、社会全体も平穏で人々も冷静です。その理由は、前述したデモ慣れということ以外に、次の4つの理由があげられます。

 1つ目は、デモの時間と場所が限定的だからです。デモが集中するのは、11月17日から12月15日までの土曜日(5回)。場所も、警察が許可する一部の地域です(パリ及び一部地方都市の中心部と近郊)。

 2つ目には、交通マヒも限定的です。今回のデモには、交通機関のストライキが加わっていないため、ごく一部の地域で、多少の交通渋滞がある程度といわれます。

 3つ目は、デモに潜伏し活動する暴徒(破壊屋、非行集団)に対する社会的な監視と制裁です。毎週土曜日のデモも回を重ねるごとに警察の取り締まりも強化されています。また、デモ参加者も含め国民全体が、彼らの行動への批判と抗議を強めています。

 最後に、次に示すように、今回のデモが、比較的小さいものにとどまっているからです。

わりと小さい今回のデモ

 政治に対して国民が街頭で気軽に声をあげる国の政府は、楽ではありません。18世紀から歴代の政権は、さまざまなデモを通じ国民の怒りを受けてきました。こうしたデモの中には大規模なものも多くあります。次の図1は、先の大戦後に起きた参加者100万人以上の大規模デモの一覧です。