正規雇用労働者が9割を占め、「同一労働・同一待遇」も保障されるフランスに対し、日本では非正規雇用労働者の割合がついに4割を超え、正規・非正規間の格差問題が深刻化しています。そこで有効な格差是正策を講ずるためには、その背後にある日本人社会の文化特性を考慮する必要があります。今回は日本の「周りに流される」「個人の権利より組織に対する義務」という2つの文化に着目します。
正規雇用を死守するフランス
図1は、フランスで、雇用形態別の構成比が30年間でどう推移したかを示したものです。黄色の無期限雇用契約(CDI = Contrat à Durée Indéterminée)が日本の正規雇用、左の有期限雇用契約(CDD = Contrat à Durée Déterminée)が非正規雇用の契約社員やパートに近いものです(なお、近いといっても基本的に異なる点も多く、これらについては後述します)。
この図で注目されるのが、無期限雇用労働者(CDI)の割合が76%前後と、ほぼ横ばいで推移している点です。仮に、この図の右にある非給与所得者(個人事業主や自由業従事者等)を除き、給与所得者だけをとって見ても、無期限雇用労働者(CDI)の割合は1984年の94%から2014年の86%と徐々に減っているものの、何とか10人中9人の線を死守していると言えるでしょう。
非正規増加の背後にある
日本人社会の文化特性
一方、総務省「労働力調査」によると、日本の正規雇用労働者の割合は、同じ30年間で、85%から62%へと右肩下がりで、逆に、非正規雇用労働者は右肩上がりに増え続け、その割合はついに4割を超えています。