100業種・5000件以上のクレームを解決し、NHK「クローズアップ現代+」、日本テレビ系「スッキリ!」、フジテレビ系「ノンストップ!」など各種メディア引っ張りだこ状態の株式会社エンゴシステム代表取締役の援川聡氏。
近年増え続けるモンスタークレーマーの「終わりなき要求」を断ち切る技術を余すところなく公開した新刊『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』に需要が殺到。続々大重版が決まり、発売3ヵ月あまりで現在3万5000部と、異例の売れ行きとなっている。
本記事では、あり得ない、無理難題を突きつけるクレーマーの「カスタマーハラスメント」を撃退する話術を特別公開する。(構成:今野良介)
モンスタークレーマー化した消費者に追い詰められる
近年、クレームの発生現場に大きな変化があらわれています。
たとえば、高齢者のクレーマー(シルバーモンスター)が急増したこと、SNSの普及でネットクレーマーが暗躍していること、あるいは、目的がよくわからないクレームが増えたこと、などです。
こうした状況には、共通点があります。
それは、「もともとは善良な一般市民だった人が、モンスタークレーマーに変身している」ということに収斂されます。お客様とじかに接する店舗の従業員などは、一見、そうとはわからない「モンスタークレーマー」にどう対応すべきか悩まされているのです。
1つの事例をご覧ください。
------ホームセンターの例--------
郊外の大型ホームセンターに、初老の男性が来店した。
休日ではないが、店内は大勢の客で混雑している。男性は家具売場に立ち寄り、座椅子やソファを品定めしていたが、しばらくして、近くにいたフロア長の肩をたたいて、声をかけた。
「お兄ちゃん、この座椅子、展示品だろ。いくらで売ってくれる?」
その商品には約1万円の値札がついていた。フロア長は、思いがけない言葉にたじろいだが、相手が白髪交じりの一般客だとわかって、少しホッとした。このホームセンターには、強面の「お客様」も多いからだ。
「すみません。これは展示品なんですが、これをお売りするわけじゃないんです。新品をお渡ししますので、値引きはできません」
フロア長が説明すると、男性客の表情がにわかに険しくなった。
「そんなことはないだろ。この前に来たときは、ソファや食器棚に『展示品につき、3割引』とかなんとか、チラシが張ってあったぞ」
「ああ、それは先月、セールに併せて販売したものですね。でも、いまはやっていないんですよ。すいません」
フロア長はこう言って、頭を下げた。ところが、男性客は食い下がる。
「それはないだろう。なんとかしてくれよ」
「いやあ、それは……」
フロア長が言い淀んでいると、男性客のボルテージはどんどん上がってくる。
「どうなんだ、はっきりしろ!」
フロア長は、男性客の勢いにたじろいだ。
すると、男性客はフロア長をにらみつけて言った。
「さっきの座椅子、背もたれにキズがついてたぞ。なんなら、ネットで写真をばらまいてやろうか。俺だってスマホぐらい使えるんだ。いくら展示品だって、それはマズいだろ?」
フロア長は、状況の急展開に青ざめた。
「いや、それは待ってください」