昨日11/12(月)のNHK「クローズアップ現代+」で、顧客によるサービス提供者への過剰なクレームや迷惑行為、いわゆる「カスタマーハラスメント」が社会問題になっていることが取りざたされました。

クレーマーの「終わりなき要求」を断ち切る23の技術を公開した新刊『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』が、実用書にもかかわらず需要が殺到し、発売即、続々と異例の大重版が決まっていることからも、「カスハラ」に悩まされている人が多いことが伺えます。

本記事では、そんなクレーマーからの過剰な迷惑行為に逆上して、罪を犯してしまった飲食チェーン店長の痛ましい事例と、自分の身を守るためのテクニックを特別掲載します。(構成:今野良介)

「加害者」にならないために

クレーム現場のストレスに押しつぶされないためには、完璧主義を捨てることも大切です。

クレーム対応で失敗する人の多くは、「絶対に失敗できない」「100点の対応をしなければならない」という真面目な人が多いのです。

酔っ払いが警察官に絡むのは日常茶飯事ですが、それは警察官が一般市民に対して「手を出さない」ことを知っているからです。それと同様に、クレーマーは真面目でおとなしい人を狙う傾向があります。

私にとって忘れられない出来事があります。クレーム対応専門のコンサルタントとして、ようやく独り立ちした頃のことです。

-----------牛丼チェーンの痛ましい事例-----------

2004年、男性が、東京墨田区の自宅マンションで背中や胸をナイフで十数か所メッタ刺しにされて死亡するという事件が起きた。

被害者は、ふだんは寡黙な介護士(当時36歳)。一方、加害者は全国チェーンを展開する牛丼屋の店長(当時26歳)。2人とも善良な市民だった。しかし、その背後には、「クレーマー」と「その担当者」という関係があったのだ。

事件の発端は些細なことだった。

ある日の昼食時、被害者男性は自宅近くにある牛丼屋に立ち寄り、持ち帰り弁当を注文したが、椅子に腰掛けて待っている間の接客態度に腹を立てた。

「店内で食べる客にはコップで水を出すのに、オレにはなにも出さないのか!」

店長が持ち帰り客への配慮に欠けていたことを詫びて、その場は収まったが、それからまもなく、男性客から電話が入った。

「さっき、持ち帰りの弁当を買った者だが、弁当が傾いて中身がグチャグチャ。とても食べられない。どんなものを売ったのか、その目で確かめに来い!」

店長は、大急ぎで被害者の自宅を訪ねた。

「誠に申し訳ございません」と丁重にお詫びしたが、男性は許してくれない。

ちょうど昼食時で、店が立て込む時間帯だった。店長に抜擢されたばかりで、2人のアルバイト店員を残してきた店の様子が心配でならない。

「今日のところは、これでなんとか」と、店長はポケットから財布を取り出し、千円札を抜いた。罵声を浴びせていた男性は、なにくわぬ顔でそれを受け取った。

しかし、一件落着とはいかなかった。男性のクレームは日増しに過激になり、事件前日から当日にかけては嫌がらせとしか思えない電話が10回以上かかってきていたという。

そしてついに、「お前の親の顔が見てみたい」のひと言で、店長がキレた。

凶行に至ったのは、その直後だった。

(了)

この店長の凶行は決して許されるものではありませんが、警察の捜査によって、被害者の男性は、同様の手口であちこちから金品をせしめる常習クレーマーだったことが明らかになりました。

取り返しのつかないことになる前に

この痛ましい事件は当時、世間を騒がせましたが、これは、必ずしも特異なケースとは言い切れません。

実際、クレーム担当者から、私の元に「相手を殺した夢を見た」とSOSが送られてくることもあります。