違う病院を探すべきだとわかってはいても行動できない妻の代わりに、Yさんはネット検索を繰り返した。そして更年期専門のクリニックを見つけ、夫婦そろって受診。初めての診察の際には、Yさんも自分の見てきたすべてを医師に話した。Nさんは医師から「更年期によるうつ症状」と診断され、HRT(ホルモン補充療法)をスタート。1ヵ月もたたないうちに、見る見るうつ症状が改善されたのである。

「人が変わったようになった妻を、元に戻してあげたかった。ただその思いだけでした」と話すYさん。彼の知識と決断力が、妻をどん底から救い出したと言っても過言ではないと思う。

体調の変化を家族にすべて話す
家族の付き添いで、半年後には改善へ

 また、こんな例もある。

 Tさん(53歳)は、日ごろから自身の体調のすべてを夫と子ども(娘と息子)に包み隠さず話してきた。51歳で閉経を迎えたときも、もちろんだ。そんなTさんが不調を感じたのは、閉経してからしばらくのこと。半年以上続く風邪のような症状、下痢、めまい、極端な口の渇きと口内の違和感、そして不眠。原因がわからず、病院を転々とするドクターショッピングを繰り返した。Tさんを心配して、病院には常に家族の誰かが付き添ってくれていたという。

 次々と襲う不調の原因がまるでわからず、自分が一気に壊れていくような不安に押しつぶされそうになる毎日が続いていたが、何をどうすればいいのかもわからない。そんなある日、テレビを見ていた子どもが「ママ、見て! ママにそっくりな症状の人がいる!」と叫んだ。それは更年期を特集した番組。「この不調は更年期なのかもしれない」……、そう感じたTさんと家族は、近くの婦人科を調べ、通院を決めた。病院を受診してHRTを始めたTさん。治療後はゆるやかに症状が改善され、半年後には症状はほぼ改善されたという。

 Tさんが不調に悩まされているとき、「食事は無理して作らなくてもいい。買ってきたもので十分」と、夫と子どもは家事を分担。取材時にはすっかり笑顔を取り戻していたTさんが「夫と子どもの理解が何より心強かったし、どんな小さな症状も耳を傾けてくれる人がいるのは安心できた」と話していたのが印象的である。

 もしTさんが普段から自分の体調の変化を家族に話す習慣がなかったら。もし家族がTさんの話に耳を傾ける習慣がなかったら。テレビの特集を見て、すぐにTさんと同じ症状だと結びつけることはできなかったかもしれない。妻や母の不調は、決してひとごとなんかではなく、家族の問題なのだ。

 更年期世代の女性にこれまでと違った様子が見られたなら、女性ホルモン減少のせいで引き起こされた不調の可能性がある。この事実を男性も女性も知識として頭の片隅でいいから置いておいてほしい。これが取材を重ねてきたいま、一番強く思うことであり、願いでもある。

(メノポーズカウンセラー、更年期ジャーナリスト 日々晴雨)