はじめまして。木下斉と申します。
高校一年生にまちづくりの世界に足を踏み入れてから早20年、すべての経験を詰め込んだ、初のストーリー形式となる新刊『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門 』を刊行しました。
お陰様で、早速大きな反響を頂いています。
「これはまいった。読み始めて数ページでそう思った。ここまで心から浸透してくるとは思ってもみなかった」
「単なる無責任な理想論ではない。実践する者に勇気を与える、これからのまちづくりのバイブルとも言える一冊」
「木下さんの本は今まで数々読んできたが、一番読みやすく、おもしろい。しかも、泣ける」
「心を揺さぶられた。できるかできないかと考えるだけじゃなく、実際にやるかやらないか。その勇気が自分には足りなかった」
「読んで終わり」の本ではなく「行動の始まり」の本したかったので、こうした声は著者として本当に嬉しい限りです。
この本のタイトルに「凡人」とつけたのには、強い思いがあります。
多くの地方が、来もしないスーパーマンを待ち望んでいることに、私は常々危機感を覚えてきました。
成功しているように見える地域のリーダーは、ときにスーパーマンに見えます。「うちのまちにもああいうすごいリーダーがいればなぁ」なんて言う声もよく聞きますが、それは単なる勘違いです。
成功している事業のリーダー像はあくまで表の姿。裏では事業や私生活で様々なトラブルに巻き込まれ、ときに事業なんて放り出して逃げ出したいと思うことさえある、ちっぽけな生身の弱い人間です。今ではたくましく見える人であっても、若い頃に様々な失敗をしていたり、 普通の人なら立ち直れないような経験をしています。なんでもできるスーパーマンが一人で成果を挙げてまちを変えてくれるなんてことは、あなたのまちでも、そして他のまちでも起こりえません。
何より、そもそも地域にスーパーマンは必要ないのです。それぞれの役割を果たす「よき仲間」を見つけ、地味であっても事業を継続していけば、成果は着実に積み上がっていきます。 最初は二、三人のチームで十分です。その中核となる仲間と共に取り組みを続けていけば、気づかぬうちに地元を超え、全国、海外に仲間ができるようになり、人生は豊かになり、そしてその地域も新たな活力を持つようになっていきます。
「うちのまちにも、観光資源があったらなぁ」
「うちのまちも、もっと交通の便がよかったら なぁ」
などの声も、他力本願という点では同じです。あなたのまちにはスーパーマンは来ないし、突然名湯が湧いて出ることもなければ、埋蔵金が見つかることもない。
ヒトなし・モノなし・カネなし、という困難な状況でもめげずに足を一歩前に出し進んできた「凡人」がいるかどうかが、各地域の明暗を分けるだけなのです。
さらに言えば、いまは衰退しているまちも、 長い歴史の中で誰かが栄えさせてきたはずです。自分たちで何もせずに文句だけ言う人ばかりいる地域が栄えた例は、歴史上ありません。
僕自身も、失敗を繰り返し今日までやってきた一人の「凡人」にすぎません。
もともと地域活性化には興味が一切ありませんでしたし、そもそも小学生低学年の頃は、友達の家に訪ねていくことも、クラスで手を上げて発言することも、初対面の大人には話すことすらできないほどの極度の人見知りでした。その後、成長と共に自分なりの主張はできるようになったものの、高校の時に商店街の取り組みに関わり、そこで会社経営までやることになったのもはっきり言ってしまえば「偶然」です。
最初は慣れない仕事にストレスで10円ハゲができたり、未熟さから株主総会で株主にブチ切れ社長を退任することになったり、投資した事業で関係者が夜逃げをしたり、地方に必要だという志から事業を立ち上げたものの代金を踏み倒されたり、「こんな若造に何ができる」とアイデアだけを取られプロジェクトから外されたり、数えきれない失敗や困難を重ねてきました。
だからこそ、この主人公の物語も、あえて「都市部で会社に言われたことをやるだけの弱気なサラリーマン」という設定にしています。実際、今地域で「ヒーロー」として注目される人の中にも、失敗を重ねて成長するまではあまり目立つ存在ではなかったケースはたくさんあります。つまり明日のヒーローは、今日の「凡人」なのです。
衰退する地域を変えることは、決して簡単ではありません。しかし、簡単ではないからとい って、限られた誰かにしかできないものではありません。
むしろ、普通に日々の生活をする「凡人」だからこそ、格好つけずに失敗してもその事実を受け止め、小さなことを馬鹿にせず積み上げ、利が生じても欲深くならずに継続できるのです。平凡である、そのこと自体が強みなのです。
どこにでもある地域に起こるこの物語を通じて、小さな一歩を踏み出してくれる人が一人で も増えれば、著者として何よりの喜びです。
【ダイヤモンド社書籍編集部から木下斉氏新刊発売のお知らせ】
「補助金が地方のガンなんや!自分らの手で稼ぐ、それ以外の方法で再生なんかありえへん」
地方衰退の「構造」とビジネスでの「変革手法」がストーリーで一気にわかる!
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「地方のリアル」と「成功のコツ」が122の充実キーワード解説からまるわかり!
●いい人材はいい「飲食店」に集まる
●地銀と信金どちらから借りるべきか
●小型店が大型店に勝つ方法
●会社員のやめどき
●不毛な「イベント地獄」
●住民の嫉妬
●地域おこし協力隊のジレンマ
●なぜ、役所の若手やる気を失うのか……他
超実用的な書き下ろしコラムも17本収録。
<あらすじ>
主人公の瀬戸淳の地元は、東京から新幹線で1時間、さらに在来線で20分という、人口5万人ほどのどこにでもある地方都市。
ある日東京で働く淳に、母が「商売をやめ、店も家もすべて売り払い余生を楽しみたい」と言い出した。
淳は東京と地元を行き来し、廃業手続きや不動産売却といった〝実家の片付け〞に追われる。
その過程で、地元で飲食店経営者として活躍する「元ヤン」同級生の佐田から「売るなら、一緒に建て替えて事業をやらんか」と誘われる。
最初は「自分にはそんなことはできない」と思うものの、徐々に気持ちが傾く淳。
やりがいを感じられない東京での仕事。寂れていくだけの地元の姿。果たしてこのまま、実家を売り払い、東京でサラリーマンを続けることが正しい道なのだろうか――。
そして、淳の「実家の片付け問題」は、シャッター街の再生、さらに地域全体の再生という思わぬ方向へと進んでいくのだった。