熱い思いが市場を拓く

 だが、「フォアグラ」や「キャビア」でもそれを食べる人が存在することを思えば、中国市場での日本産米もここを極めるしかないのだろう。

 その好事例が2015年だ。この年、対中輸出は568トンにまで伸びた。このうち、412トンは江蘇省無錫市の華西村が輸入したものだった。農林水産省農産企画課は「春節に向けて日本の米を買いたいという特需があった」と振り返る。この華西村は、中国世界紀録協会により「中国で最も豊かな農村」(2009年)に認定された村だ。412トンの正体は、村を挙げての“爆輸入”だったのだ。

2015年に伸びたのは特需だった

 今上海では、高級日本料理店を中心に日本産米の取り扱いが始まっている。「官の依頼による民の協力」という構図の中でのテストマーケティングだが、それでも日本料理店の店長は前向きだ。

「残念ながらこの中国において日本産米には競争力がありません。それでも、日本にいいものがあるなら、私も中国での発信に協力したいと思っています」

 日本産米の一連の取材で、筆者は「頑張りたい」という熱い声を繰り返し聴いた。日本料理店、輸出業者、そして農水省の担当者まで熱かった。「攻めの農業」には程遠いが、難しいといわれる中国市場を克服する力があるとしたら、残るはこの「熱い思い」でしかない。

(ジャーナリスト 姫田小夏)