お酒を飲んでいないのに呼気からアルコールが検出され、酒気帯び運転で摘発——。その原因は、なんと入れ歯安定剤だったという。お酒以外で他にも微量なアルコールを含む食べ物、飲み物、口腔ケア製品はあるので、運転する人は要注意だ。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
「酒気帯び」の正体は
入れ歯安定剤だった
もし、お酒を飲んでいないのに呼気からアルコールが検出され、酒気帯び運転で摘発されたら、まずは入れ歯安定剤の影響を疑ってみよう――今年9月27日、そんな教訓が一般化されそうな判決が東京高裁で下された。
酒気帯び運転で運転免許を取り消された49歳の男性医師が「入れ歯安定剤に含まれるアルコール成分が呼気検査に影響した可能性がある」として、処分取り消しを求めた控訴審で、医師の主張が認められ、処分取り消しとなったのだ。
この医師は、同じく道路交通法違反の罪で起訴され、一審で有罪となったが、二審の東京高裁が6月、同じ理由で逆転無罪の判決を言い渡し、7月に確定していた。
(前略)
弁護側への取材などによると、医師は2015年3月に浜松市で、5月には静岡市で乗用車を運転し、県警の呼気検査を受けた。いずれも呼気1リットル中のアルコール濃度が酒気帯び運転の基準となる0.15ミリグラムを超え、道交法違反の罪で起訴された。
医師は「朝使った入れ歯安定剤にアルコールが含まれていた」などと無罪を訴えたが、昨年4月の一審判決は、医師が2度とも前夜に飲酒していたことなどから有罪と認定。別に起訴された暴行罪と合わせ、懲役一年、執行猶予3年を言い渡した。
控訴審では、入れ歯と歯茎の間からはみ出た安定剤を、指で取り除いたという医師の主張通りに再現実験した結果、呼気から酒気帯び運転の基準値以上のアルコールを検出。高裁は、口内に残った安定剤が呼気検査に影響を与えた可能性を「否定できない」として一審判決を破棄。判決は7月に確定した。
【中日新聞 2018年8月21日配信】
40代で、しかも医師が入れ歯、というのは相当レアな感じがする。何か特別な事情があったのだろうか。