英下院は1月15日、EUとの間で合意した離脱協定案を歴史的大差で否決した。この2年間難航した離脱交渉であるが、無秩序な離脱(ノーディール)を回避すべく離脱の延期に向けた動きが活発化するだろう。一見すると「空転」に終始している英議会の対応だが、国民が感情的に下した決断を現実的な方向性に修正するプロセスと言えないだろうか。
英議会が離脱協定案を否決
今後は延期か、無秩序な離脱か
英下院は1月15日、メイ首相が欧州連合(EU)との間で合意に達したEU離脱協定案を反対多数で否決した。投票結果は賛成が202、反対が432となり、歴史的大差で否決された。最大野党・労働党のみならず、与党・保守党からも離脱強硬派を中心に多くの議員が造反に回った。
メイ首相は21日までに次の行動計画を示す必要がある。15日の議会では否決されることがほぼ確定していたため、メイ首相は再び離脱協定案を議会に諮る可能性を模索していた。ただ200票以上の歴史的大差がつく形で否決されたとなると、再び離脱協定案を議会に諮ったところで、可決にはまずならない。
この事態を受けて労働党のコービン代表はメイ政権の不信任案を提出し、16日に審議されたが、反対多数で否決された。メイ政権は12月に実施された保守党議員委員会で信任されており、また閣外協力関係にある北アイルランドの地域政党、民主統一党も反対に回ったことから、メイ政権は続投することになった。
今後の展開についてはさまざまな可能性がある。ただ大局的に考えれば、離脱交渉の延期か無秩序な離脱(ノーディール)かの二択になる。ノーディールを回避したいなら、離脱の期限(ロンドン時間2019年3月29日午後11時)を延期するしかない。離脱交渉の延期をEUに対して要請する場合、いくつかの選択肢を想定し得る。