英国が立つブレグジットの正念場、危ぶまれる「強硬離脱」の副作用先日、臨時のEU首脳会議が開催され、英国のEU離脱協定の草案が正式合意された。しかし、これで終わりではない。合意による離脱か、非合意の離脱かによって、英国の情勢は大きく変わってくる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

臨時サミットを開催した英国とEU
試されるメイ首相の耐久力

 交渉の難航が伝えられていた英国のEU(欧州連合)離脱問題がようやく進展を見せた。11月13日、英国とEUは英国のEU離脱に関する協定の草案に関して、暫定合意に達した。翌14日には英国でこの草案が閣議で承認されたが、15日にラーブEU離脱相が辞任(後任はバークレイ保健・社会福祉担当閣外相)するなど閣内では異論が相次いだ。

 他方でEU側も、19日に外相などEU担当閣僚による総務理事会の臨時会合を開催し、離脱協定の草案が承認されるとともに、この案を巡る本格的な再交渉には応じない構えで一致した。離脱強硬派など再交渉を求める一部の英国の政治家に対する牽制の意味が込められた形となった。

 EUの強硬な態度の裏には、協定の草案に基づく「合意に基づく」離脱か、または「合意のない」離脱かの二者択一を英議会に迫るメイ首相を支援する思惑があった。事実、ドイツのアルトマイヤー経済相は、再交渉に応じないことで英議会が協定案で合意することを後押しすると語っている。

 そして25日には臨時のEU首脳会議(サミット)が開催され、離脱協定の草案の正式合意がなされるとともに、将来的な通商関係の大枠を示す政治宣言案も採択された。今後、英国とEUはそれぞれの議会で離脱協定を審議するプロセスに入るが、最大のポイントは英議会が協定案を承認するかどうかにある。

 英議会で離脱協定が承認されれば、英国はロンドン時間19年3月29日午後11時に「合意に基づく」形でEUから離脱することができる。メイ首相は議会が冬期休暇に入る前の12月半ばまでの承認を目指しているようだが、反対に英議会で協定が承認されなければ、英国は「合意のない」形でEUから離脱する可能性が高まることになる。