私が尊敬する心療内科の先生がよく使われる専門用語に、「気質的」「気能的」という言葉があります。「気質的な異常」は、目に見える障害。つまりレントゲンや精密検査によって「ここに、腫瘍ができています」といったような、分かりやすい障害のことです。「気能的な異常」は、これとまったく反対で、本人には苦しくても、他者には見えない障害です。検査を受けてもどこも悪くないと言われるのに、胃が痛かったり、疲れてしかたなかったりするのは、気能的な障害があるということで、人の病のほとんどは、気能的な障害から起こっている、あらゆる検査はそれを証明するために存在するのですと、先生はおっしゃいます。

 私が勉強させていただいている心療内科には、医療機関を転々とした末に来院される方が増えています。紹介状が必要だったり、予約制であるのにもかかわらず、一日約50人の方が来院され、その年齢も10代から90代までと幅広く、男女数もほぼ半分ずつ。

 目に見えないストレスが原因で心身を蝕まれながらも、残念ながら初期段階で専門医の正確な診断を受けられず、しかも検査では何の手がかりや証明をつかめず、適切な治療を得られなかった「気能的障害」の治療を求めて来られる方が多いのです。

 研修生として、こうした患者さんと先生とのやりとりを聞くにつけ、また、私自身が苦しんだ経験を思い起こすたびに、ストレスの正体やストレスが引き起こす心身の不調、さらにはストレスコントロールを知っておくことが、どれほど心身の健康を保つのに重要か、広く伝えたいと思うようになりました。

 次回から、ストレスの成り立ち、ストレスが起こる具体例、そしてストレスコントロールの方法について、できるかぎりわかりやすく書いてみたいと思います。