上司が部下に伝えるのは
「事例性」だけでいい

 私たち産業カウンセラーは、精神医学的な事例に出合った場合、「事例性(caseness)」と「疾病性(illness)」の2つに分けて考えます。

 例えば、今回の事例のような場面では、医師以外の立場である人(筆者も含む)は、事例性にフォーカスした会話を展開しなければなりません。

 事例性とは、「元気がない」「チームメンバーとのトラブルが多い」「遅刻が多い」など実際に起きている問題のことを指し、周囲にいる人(特に上司)は変化に気づきやすい傾向にあります。

 一方で、疾病性とは、「病気の症状に関すること」で、専門家、主に医師が判断する分野となっています。

 今回の場合、Aさんは「仕事のパフォーマンスが低下」「欠勤が多い」という事例性が明確でした。ですからO部長は、事例性だけにフォーカスした会話を展開していれば、展開は大きく変わっていたはずです。

 では、O部長はどうすればよかったのでしょうか。会話から学んでいきましょう。

O部長 「Aさん、今日はいくつか確認したい事があるのでお話を聞かせていただけますか?」
Aさん 「はい。かしこまりました」
O部長 「まず、最近、仕事のパフォーマンスが低下しているように感じるのですが、Aさんはどのように認識されていますか?」
Aさん 「そうですね。最近、日中にとても睡魔が襲ってくることがありまして…。職場でこんなんじゃだめだと思っているのですが、どうしても朝起きるのが辛いことが増えました」