こうした「ロシア封じ込め作戦」を中東に拡大したのが「アラブの春」でした。

 長期独裁政権として倒されたのは、エジプトのムバラク政権、リビアのカダフィ政権、チュニジアのアリ政権。いずれも冷戦時代から続く親ロシア派(親ソ連派)の社会主義政権でした。

 一方、サウジアラビア王家、クウェート王家、ヨルダン王家などの親米の長期独裁政権は、かすり傷一つ負っていないのです。つまり、独裁政権かどうかが問題だったのではなく、米国流の新自由主義を認め、市場を完全に開放し、外資を自由に受け入れるかどうかが問題だったのです。

 プーチンとこれに追随する親ロシア派政権は石油などの主要産業を国有化し、外資を規制してきました。ここが、「改革開放」に転じた中国との違いです。

プーチン政権がシリアを
テコ入れし続ける理由は?

 もう1つ、地政学的な観点から見れば、ロシア海軍が地中海へ進出する際の拠点を提供してきたのがこれらの国々でした。これらの国々を米国側に寝返らせれば、ロシア海軍は地中海に寄港地を失い、黒海に封じ込められます。

 そうはさせまいとプーチンが全力でテコ入れしたのがシリアのアサド政権でした。このしぶといアサド政権を潰すため、米国オバマ政権はシリアの反政府勢力を軍事援助し、イスラム過激派集団のIS(イスラミック・ステイト)をも野放しにしてきたのです。

トランプ政権誕生で
「ロシア包囲網」は破れた

 ところがその後米国で、なんと国際金融資本と対決する大統領が登場しました。ドナルド・トランプです。「ウォール街のための戦争はもうやめる。アメリカはもはや世界の警察官ではない。シリアからは撤収する」と言い出したのです。

 ウォール街は震撼し、トランプを大統領の座から引きずり下ろそうと、マスメディアに「ロシア・ゲート」(2016年米大統領選で、ロシアの情報機関がトランプ陣営を支援したという疑惑)を大々的に報じさせてきました。しかし、トランプ本人の関与を示す決定的な証拠がなく、トランプ弾劾はいまだに成功していません。

 逆に、トランプ政権の誕生を歓迎したのがプーチンです。IS叩きでロシア軍は米軍と協力し、ISに壊滅的打撃を与えた結果、アサド政権の勝利という形でシリア内戦は終息に向かっています。トランプの米国を欧州諸国から分断し、対ロシア経済制裁の輪から引き離すのがプーチンの戦略です。