ビジネスの成否は「交渉力」にかかっている。アメリカの雑誌で「世界で最も恐れられる法律事務所」に4度も選ばれた法律事務所の東京オフィス代表であるライアン・ゴールドスティン米国弁護士に、『交渉の武器』(ダイヤモンド社)という書籍にまとめていただいた。本連載では、書籍から抜粋しながら、ライアン弁護士の交渉の「奥義」を公開しているが、今回のテーマは「チーム交渉」。映画「ゴッドファーザー」のワンシーンには、「チーム交渉」に関する重要な教訓が込められているという。

人数が多いと「弱者」に見える

 交渉のテーブルにつくのは「少数精鋭」が原則である。
 私の交渉相手のなかには、交渉の場にズラズラと何人も連なってやってくる会社もある。「多勢に無勢」という言葉があるように、人数が多いほうが優位に立てると考えているのだろう。

 しかし、これは間違いだ。むしろ逆。交渉においては、人数が多ければ多いほど弱そうに見える。そして、少数精鋭で交渉に臨む相手に、精神的な余裕を与えてしまうのだ。

 たしかに、難しい交渉に少人数で臨むと緊張を強いられる。
 自分が対応を誤れば、自社(私の場合にはクライアント)に不利益をもたらしてしまうかもしれない。そのプレッシャーをひしひしと感じながら、交渉の席につくことに不安がないと言えば嘘になる。しかし、不安があるからこそ、万全の準備をする。そして、責任と覚悟をもって交渉に臨むことができるのだ。

 そのように責任と覚悟を胸にテーブルについた側からすれば、ズラズラと大人数で交渉の場に現れた相手は“烏合の衆”に見えるものだ。しかも、交渉において発言するのは限られた人間だ。大人数がいても、そのほとんどの人間はじっと黙ったままなのだ。ならば、その場にいる必要はないではないか。 

 そして、相手にこのように思われても仕方がないだろう。
「数を頼りにしなければならないほど、弱い人たちなのだ」
「それだけ、焦っているのだろう」
「こっちが3人でやっていることに、相手は10人を使っている。無駄な人件費をかける無能な集団なのではないか?」
 そして、精神的に一段高い場所から交渉を行う余裕を相手に与えてしまうのだ。