記者会見で永野社長がそう話したように、後継者選びで重視したのは入社年次でも経歴でもなく、まさに「人柄」だった。

 実直にも映るその人柄を、永野社長が改めて実感したのが昨年、再保険事業の中核として位置付けていた子会社、トキオ・ミレニアム・リー(TMR)の売却を決めたときだ。

 折しも再保険事業は、国内外で頻発する自然災害と過剰な資本流入によって、事業環境がなかなか好転しないという状況にあった。その中で、永野社長がTMRの売却を議論の俎上に載せた時、「仕事を共にしてきた社員がいるんですよ!」と最後まで抵抗し、仲間を気遣ってみせたのが、海外事業を統括する小宮氏だった。

 その小宮氏を、永野氏は早い段階から後継者の最有力候補として目をかけていたようだ。今から3年前、小宮氏が海外駐在の経験がないことを知ると、すぐに米コロンビア大学に1年間留学させ、帰国後すぐに海外事業を任せるかたちにしたからだ。

 そもそも、小宮氏の入社は1983年(昭和58年)。82年入社の広瀬氏の1年下であり、今後は持ち株と傘下の中核会社で、年次が逆転する異例の経営体制を敷くことになる。ただ、その懸念を吹き飛ばしたのもまた、小宮氏の仕事に対する姿勢だったという。

 今の東京海上にとって、大きな課題となっているのが1兆円に迫る金額で買収した米HCCとのさらなる連携強化だ。

 買収後しばらくは、永野氏自らがHCCのトップと直接コミュニケーションを図ってきたが、昨年9月以降は小宮氏にバトンタッチ。その後は「四苦八苦しながらも毎日のように(HCC前トップの)クリス氏とやり取りしている」(幹部)姿を見るにつけ、永野氏の気持ちが固まっていったようだ。

「環境変化が激しく、スピードが求められる時代。グローバルで企業価値を高め、力強く成長していく」

 記者会見の冒頭で、そう意気込みを語った小宮氏。米国をはじめ世界経済に減速の兆しが出始める中で、次期社長には事業をドライな目で見定める力が一段と求められることになりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)