(2)「株主主権・成果主義」犯人説

【内容】株主の監視が強まるなかで、会社はとにかく利益を上げることを求められるようになった。経営陣は現場に売り上げ増やコストダウンの強烈なプレッシャーをかける。その結果、現場は意図して、または意図せずに、プロセスを変え、手続きを無視し、成果を偽装する。個人のレベルでも成果が厳しく問われるようになり、その結果が出世や給与に直結するために、問題行動を起こしてしまう。こういう外部からの圧力こそが、企業不祥事多発の原因である。

【評価】確かに、短期業績へのこだわりは会社も個人も強くなった。経営者は株主の、社員は上司の評価を気にすることがより当たり前となり、上司の意向などに対する「忖度メカニズム」も働きやすくなっている。とはいえ、一方では、リスクマネジメントや内部統制が整備されるようになり、安易な問題行動の誘発につながらない手立てもしっかりと用意されるようになった。

 エレクトロニクス大手の粉飾決算や、地銀の不正融資などの大型の案件が社会的に目立つことから、不祥事増加の犯人と疑われそうだが、実際には、株主ガバナンスの強化とその延長戦上の内部統制の充実により、組織の健全性は過去よりも数段向上しているのではないかと考えている。個人の問題行動への制御も厳しくなり、早々に発見されるようになってきた。いま起こる個人犯罪の多くは、内部統制の整備が遅れた非主力の関係会社や各種団体などであり、こちらも改善中である。

(3)「法と実態の乖離」犯人説

【内容】過去に作られた法令が、すでに形骸化していたり、または現在の技術や社会情勢に合わなかったりする。

【評価】近年話題になった自動車メーカーの完成車検査などは典型的な例だ。また、インターネットやスマホの新サービスが、過去、それがなかった時代に作られた法に抵触すると報道されることもある(法が時代遅れという報道もあるものの、違法なサービスではないかという文脈での報道もある)。今後、来るべき AI、IoT 全盛の時代になると、多くの法律が世の事情と合わなくなることは必至だ。とはいえ、現段階において、法と実態の乖離による不祥事が日々報道されているかというと、そこまでとはいえない。