米政府は対日貿易赤字の削減を目指し、新たな貿易合意に向けて日本政府と議論を行っている最中だ。

 同時に、安倍氏は領土問題の協議に再度はずみをつけようというロシア政府の提案に乗り気になっている。朝日新聞の報道によると、同氏は昨秋、北方領土に米軍が駐留することはないとプーチン氏に伝えた。

 カーネギー国際平和財団モスクワセンターの「アジア太平洋地域におけるロシア」プログラムを率いるアレクサンドル・ガブエフ氏は、「日米を引き離す多数の要因がある今、日米が相互に疑念を抱く雰囲気を作り上げることは大きな成果となる」と述べる。

 ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は今週、早期に合意に至る公算は小さいと述べた。この領土問題は、第2次世界大戦後にロシアと日本が平和条約を締結する妨げとなってきた。プーチン、安倍の両氏は会談後に報道向けの声明を発表したが、突破口が開かれたことを示すものは何もなかった。

 安倍氏はこの領土問題の解決に個人的にもこだわってきた。安倍氏の父(の安倍晋太郎氏)は外相だった1980年代、日本では「北方領土」として知られる諸島の返還を目指し、外交の推進役となった。北方領土は第2次大戦後、ソ連(そしてその後のロシア)によって占領されてきた。

 安倍氏は、ロシアの太平洋岸の遠隔地である広大な極東地域に日本のビジネスを拡大することで、北方領土をめぐる取り決めがロシアにとって経済的に魅力的なものになるようにしたいと考えている。この地域は何十年にもわたり他地域に比べて見過ごされてきた地域で、ロシア政府は投資拡大と生活水準の向上を図ろうとしている。

 ロシア国営通信の報道によれば、日本は放射性廃棄物の保管施設建設のために11億6000万ルーブル(約19億円)の拠出を約束した。しかし、署名ひとつで契約を締結し、民間企業による投資も約束させることのできる中国の指導者と異なり、日本の指導者が日本の優良企業にロシア投資を売り込むのは困難な仕事だ。欧米諸国による対ロシア制裁措置とロシアの景気減速で、日本企業の同国への投資意欲は低下している。

 ロシアの国内要因も領土交渉が早期に妥結する可能性を弱めている。ロシア国民のプーチン大統領支持率は、年金改革で激しい抗議を受けた後、2006年以来の低水準に落ち込んでいる。

 22日にはモスクワの日本大使館周辺で領土返還に抗議するデモが行われ、十数人のデモ参加者が拘束された。

(The Wall Street Journal/Thomas Grove)