「SNS依存」と聞いて「自分のことだ」と思う人も少なくないだろう。その反動なのか、ある日突然、ぱったりとSNSを辞めてしまう人もいる。まるで電池が切れたようにSNSを更新しなくなった人は、あなたの周囲にもいないだろうか。その人の背景には、こんな事情があるのかもしれない。(取材・文/フリーライター 武藤弘樹)
SNSで広がる人間関係
それを放棄する心理とは?
SNSをやっていると、多かれ少なかれ人の輪が広がっていく。人とのコミュニケーションがSNSの醍醐味(だいごみ)であり、対面して話し合う現実とは違った、しかし確固たる世界がネット上にも展開されている。
SNSは21世紀に普及した新種の人間関係の在り方であり、不慣れなツールに人類みな手探りという感でSNSいじめやSNS依存といった社会問題も見られるが、とりあえず楽しいので老若男女がたしなんでいる現状である。
SNSは人間関係と書いたが、意図してぶち壊そうと思うかあるいは相当な下手を打たない限り人間関係はながらく続いていくものであり、これがSNSにも当てはまる。現実世界とSNSの大きな違いは、SNSはログインしなくなれば人間関係を断つことになる、という点である。
まあそのせいで、「匿名だしやばくなったらアカウント消せばリアルには関係ないし大丈夫っしょ」と、SNSにまつわる全ての責任を放棄して生き方をゆがませる人もいるのがネットの闇なのだが、常識的な人はまずネットだろうが匿名だろうがアカウントを己の分身と扱って、誠意をもって運用していくものである。
しかし常識的な誠意を持ち合わせていて、かつSNSにそれなりにどっぷり漬かっている人でもSNSをやめてしまうことがある。自分が属するひとつの人間関係、およびコミュニティーを放棄するのだから本人にとってはちょっとした事件である。SNSをやめるに至る経緯や心理とはどういうものなのかを掘り下げていきたい。
なお、今回紹介するのは「SNSをそれなりにどっぷり利用していたけれどやめた人」に限っている。