「ずばり、私の症状ですね」

 うなずく孝子さん。

「そうですね。こうした症状に襲われたみなさんの多くは、あなたと同じように内科などを受診します。でも検査をしても異常はみつかりません。パニック発作は急激にピークに達し、その後はすぐに軽快してしまうので、病院を受診するときは元気なんですよね。だから『気のせい』とか『疲れがたまっている』とか言われて、そのまま帰されてしまうこともあります。ただ最近は、パニック障害に対する認知度が高まってきましたので、当科のような精神科を受診するよう促す先生も増えています」

「そうですね。でも、私はパニック障害って、パニックを起こす病気かと思っていました。なんか慌ててしまって、どうしたらいいか分からなくなるような。イメージとぜんぜん違ってました」

 そう言う孝子さんの言葉にうなずきながら、医師はさらにつづけた。

「パニック発作を繰り返すと、『また発作が起きるのではないか』という不安が、常に襲ってくるようになります。『予期不安』というんですけどね。この予期不安が強くなると、以前に発作を起こした場所、あなたの場合は電車、エレベーター、映画館ですね、そういった場所に行くのが怖くなります。怖くて行けなくなってしまう。高速道路や人ごみなどもダメという人もいます。発作が起きた時に逃げられない場所や恥をかくような場所に、恐怖を感じる。これが『広場恐怖』と呼ばれるものです」

 まさに、自分に起きていることとぴったりあてはまったので、孝子さんはちょっぴり、ほっとした。病名さえ分かれば、治せると思ったからだ。

「パニック障害の原因は、気のせいでも疲れでもなく、脳の機能不全が大きな影響を与えていると考えられています。特に珍しい病気ではなく、100人に2~3人はかかる疾患です。男性より女性が2~3倍多く、年齢では20歳代での発症が多い。傾向としては、環境変化で緊張、ストレスが高まると発症しやすいようです。精神的に弱い人がなるといった偏見もあるようですが、スポーツ選手でも医者でも、なるときはなりますから、自分を責めるようなことはしないでくださいね」