のしかかる
ミス厳禁の重圧

 厚労省の発表によれば、2017年度の介護福祉士の合格率は70.8%(6万5574人)。国家資格の中では比較的取得しやすい資格とされているが、試験を受けるためには「従業期間3年以上かつ従業日数540日以上+実務者研修」の修了が必須条件となっている。

 そこまでの手間と時間をかけてやっとの思いで取得しても、介護福祉士に待っているのが職場ヒエラルキーの最底辺という現実だとすれば、なんとも救いようのない話だ。

 こうした過酷な状況に嫌気がさし、業界から逃げ出そうにも、今度は施設側からの執拗な引き留めにさいなまれることになるという。

「介護福祉士に対しての引き留め文句といえば、『君が辞めたら仕事が回らなくなるし、ご利用者様が亡くなるかもしれないんだよ。狭い業界だし、うちを辞めたら悪評が回っちゃって再就職できないよ』というのが定番です。この業界は人間関係が濃厚で、『○○が××で働いているらしい』といったうわさ話もよく飛び交いますからね。とはいえ、職員が足りないのは施設の運営側の責任ですし、上の人間が辞めた職員全員の行き先を把握できるはずもありません。こうした脅し文句には絶対に屈しないことが大切です」

 どれだけ情熱を持って仕事に取り組んでいようとも、時には逃げる勇気も必要なのだ。ただ、今後もずっと介護福祉士として働こうと決めている人は、一生このヒエラルキーから抜け出せないのか。

「医療・介護業界で働いている人は“訴訟リスク”に非常に敏感です。そのせいか、誰も責任を取りたがらず、絶対にミスをしてはいけないという強迫観念に駆られています。こうした現場に長年いると、狭い視野でしか物事を見られなくなってしまいますが、自分次第でいくらでも状況は改善できます。介護福祉士の資格があれば、ケアマネジャー(介護支援専門員)や介護施設長を目指すこともできますし、独立することだって可能なはず。介護福祉士の皆さんに一言、“失敗を恐れず、いい介護を続けてください”と伝えたいです」

 “国家資格”“ドル箱産業”という聞こえのいい言葉の裏には、世間の認識以上に厳しい現場の苦労があるようだ。