厚生労働省の統計不正スキャンダルで、なぜか追及を免れているのが「追加支給にかかる事務費195億円」である。一口に195億円といっても、それがどれほどの金額なのかピンときにくい。そこで、「195億円で何が買えるのか」を考えてみた。(ノンフィクションライター 和泉虎太郎)
「追加支給のための経費195億円」を
なぜ誰も追及しないのか
「毎月勤労統計調査における不適切な事務処理」と、厚生労働省は発表資料では言いつくろっているが、不適切な事務処理とは、何らかの事務処理をしたという意味であって、今回の統計不正スキャンダルは、すべき事務をしなかったという“手抜き”である。
なぜそんなことになったのかという追及が開会中の国会や報道でかまびすしいが、忘れられていることがある。あるいは意図的に無視しているのか。それは事務費である。
毎月勤労統計調査の再集計によって明らかになった、本来給付されるべき手当、保険金、補助金、助成金の不足分の支払いは無駄でも何でもない。しかし、その追加支給にかかる事務費195億円は、手抜き役人の尻ぬぐいに使われるカネである。
まず、追加給付600億円のために195億円かかるという、そのコスト構造は想像も付かないほど高いものであり、その点については厚労省も「その算出根拠必要額を精査した」としか説明していない。言い訳のように「既定の事務費等の節減により財源を捻出」するとしているが、その捻出には国民誰かの犠牲か、あるいは無駄遣いがあったわけで、いずれにしても、役人の手抜き仕事を国民の税金で尻ぬぐいしようとしている悪事に変わりはない。
労働組合を支持母体とする野党各党も、旧労働省のスキャンダルには忖度しているということかとゲスの勘ぐりをしたくもなるが、国会議員がアテにならないのなら、怒りは納税者自らが広げていかねばならない。
そこで調べてみたのが、「195億円あったら何ができたか」。