また、日本の大半のホテルでは浴衣、歯ブラシ、髭剃りなどが置いてあるため、荷物を少なくできるのが便利だ。しかし、ドイツの大半のホテルではこういったアメニティーはない。宿泊料金が1泊100ユーロ(1万3000円)以下のホテルでは、ヘアドライヤーやスリッパもないため、客が自分で持っていかなくてはならないので、荷物がかさむのである。

 さらに、日本では小包や郵便をめぐるストレスもドイツに比べるとはるかに少ない。宅配便の配達時間の指定はドイツよりもはるかに緻密である。ある時、日本で買った書籍や食料品などの小包を10個以上ドイツに送ることになった。すると近くの郵便局の局員が夜9時ごろ家まで小包を引き取りに来てくれ、料金もその場で払うことができた。ドイツでは考えられないサービスだ。

 ただ私は、玄関で大汗をかきながら荷物の重さを量っている郵便局員の姿を見ながら、「この人は今日何時に自宅でくつろげるのだろうか。明日の朝には、何時にまた仕事に出なくてはならないのだろうか」と一瞬思ってしまった。

 コインに表面と裏面があるように、あらゆるものには光と影、長所と短所がある。私は毎年日本とドイツを行き来する間に、「日本のおもてなしは客にとっては素晴らしいことだが、サービスを提供する側にとっては、過重な負担になっているのではないか。日本の店員や郵便局員の労働条件は、サービスの手抜きをしているドイツよりも、悪くなっているのではないか」という思いも持つようになってきた。

 日本から離れてみると、ここまで客に寄り添ったサービスは決して当たり前のことではない。この便利さを追い求めるあまり、日本人は他国に比べて気持ちのゆとりや豊かさを見失ってしまっているのではないだろうか。ドイツから日本を眺めてみた時、そう感じずにはいられないのだ。次回は、ドイツ流・お金をかけずに楽しむ生活の極意や、真の「豊かさ」を手に入れる意識の持ち方について述べていきたい。