「いわゆる児童虐待をしてしまう親が、親権を濫用しているとしか思えない事例は、過去にも数知れずありました。そのような事例では、親権停止が子どもを守ることにつながるのは当然ですが、さらに親を加害者にしないことにもつながると考えています」(徳丸さん)

 2011年に民法が改正され、親権は「子の利益のため」と明記された。しかし、親権停止件数は年間100件に達していない。万件単位のドイツやイギリスとはケタが違う。

「ですが、諸外国と同じように親権停止するだけで解決する問題でもありません。児童虐待の件数増加に見合うだけの児童福祉司の増員と、児童相談所の専門性の向上が必要です。さらに、関係機関や民間との役割分担も必要だと考え、大阪の地元で実践に尽力しているところです」(徳丸さん)

グレーゾーンでもがく
子ども自身の声を聴く重要性

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「保護の対象から権利の主体へ」という子ども観の転換も必要だ。子どもは社会的に弱い存在だが、もしそこに「かわいそうな子ども」がいるのなら、「かわいそう」な状況をつくっている大人や社会の責任だ。状況を変えるためには、まず当事者である子ども自身の声を聴くことが欠かせない。

「目黒や野田市の事件では、子どもたちは勇気を持って状況を大人に伝えていました。最もしんどい状況、親から引き離すべきかどうかのグレーゾーンにいる子どもたちの声は、ほぼ聞かれていません」(徳丸さん)

 とはいえ、子どもが真実を語れるとは限らない。理由は、虐待の激化に対する怖れから大人への不信感まで、様々だ。時には、意図的な嘘もある。振り回された大人は、困惑し、傷つき、子どもに対する不信感を持つかもしれない。

「でも、子どもの言葉を言葉通りに受け取れば、重く受け止めたことになるとは限りません。関わる人たちが子どもを中心に、子どもとともに、その子にとっての『最善の利益』を問い続けながら対応していくことが、必要なのではないでしょうか」(徳丸さん)

(フリーランスライター みわよしこ)