タイでは、2014年5月に発生した軍事クーデター以降4年半以上にわたって事実上の軍政状態が続いてきた。プラユット現首相は上述のクーデターの際の陸軍司令官であり、その後に暫定首相に就任し、民政移管に向けて憲法改正などのプロセスを進めてきた。
クーデター直後には暫定政権は1年以内の民政移管を目指す方針を掲げたものの、改憲案はなかなかまとまらず、国民投票を経て政府の改憲案が可決されるまでに丸2年以上を要することとなった。これに伴い民政移管の前進が期待されたものの、直後に前国王(ラーマ9世/プミポン前国王)が崩御した上、その後即位した現国王(ラーマ10世/ワチラロンコン国王)は政府の改憲案の修正を求めたため、最終的に現憲法の施行はクーデターから約3年が経った2017年4月にまでずれ込んだ。
その後も、手続き論などを理由に民政移管の実現に必要な法整備のスケジュールが後ずれする状況が続き、軍事政権が事実上民政移管の先延ばしを狙っているとの見方が強まった。この背景には、仮に早期に総選挙が実施されれば、軍政と対立するいわゆる「タクシン派」が勝利する可能性が高いことが影響したとみられる。
ただし、昨年9月に選挙関連法がすべて公布された結果、総選挙実施のデッドラインが今年5月に定められたことで、事実上の民政移管に向けた「カウントダウン」が始まった。昨年末時点では今年2月24日に総選挙が行われる方向で話が進んでいたが、1月23日に国王が総選挙の準備に関する勅令を発し、最終的に3月24日に行われることが決まった。