南アフリカでは、昨年末に行われた与党ANC(アフリカ民族会議)の議長選でラマポーザ現大統領(当時は副大統領)が勝利した。その後に当時のズマ大統領を巡る汚職疑惑などの表面化を受けて、今年2月にズマ氏が大統領を辞任した結果、ラマポーザ氏が大統領に就任した。
議長選の際、ズマ前大統領による汚職及び暴行などの疑惑が度々取り沙汰されてきたため、ラマポーザ氏は汚職対策を強化する方針を打ち出し、ズマ前政権下での景気低迷の長期化を背景に経済の建て直しを優先課題に据えるなど、「反ズマ色」を前面に押し出す選挙戦を展開した。
ズマ氏は、憲法規定において大統領の任期は2期が上限とされているため、元妻で外相や保健相などを歴任し、昨年1月までアフリカ連合(AU)委員長を務めたドラミニ=ズマ氏を議長選に擁立した。とともに、党内の「ズマ派」に対する締め付けを図った。この結果、議長選ではラマポーザ氏が勝利を収めたものの、ドラミニ=ズマ氏と票が拮抗する辛勝となり、与党ANCは分裂の様相を呈することとなった。
こうしたことから、ラマポーザ政権は汚職撲滅のほか、国営企業改革や財政規律の徹底などの取り組みを通じて財政健全化を図るなど、経済再生を政策の中心に据える一方、来年に予定される総選挙を意識した党内融和を図る必要に迫られた。
その結果、財務相や公共事業相といった政策の柱となる閣僚には、ラマポーザ氏に近い財政健全化路線を支持する人物を就ける一方、議長選を戦ったドラミニ=ズマ氏をはじめとする「ズマ派」の人物も内閣に登用するなど、バランスを重視せざるを得ない状況となった。