ネット証券に勤めている者としては、せっかくローコストな取引が可能なネット証券なのに、コストを抑えた適切な投信に顧客の資産を十分誘導できていない点を大いに反省しなければならない。

 筆者が考える資産運用に掛けてもいい費用は「年率0.5%が上限」である。100万円を運用するのに5000円、1000万円を運用するのに5万円以上支払うのは払い過ぎだという価格感覚を持ってほしい。

 率直に言って、対面営業のセールスから購入する運用商品は、手数料コスト年間0.5%以内の基準を満たす場合がごく少ないはずだ。「0.5%ルール」をフィルターにすることによって、セールスマンによる不適切な勧誘から金融資産を守ることができる。

 70歳くらいの年齢は、「自分で物事を決められるのだから、老人扱いされたり、あれこれ他人に指図されたりしくない」と考えるか、「話を聞いてくれる人、構ってくれる人がほしい」と考えるかの分かれ目ではないかと推察するのだが、是非とも前者に踏み止まって、今のうちに適切な資産運用状態を作ってほしい。

 人恋しい気持ちは分からなくもないし、お客様扱いされることは気持ちがいいだろうが、人間関係への欲求を満たすには、金融取引はあまりにも高くつく。別の手段を考えるべきだ。

課題2 運用効率を保つ

 先に、高齢者に金融資産が集中することによって、リスクを取る投資に向かう資金が減る可能性について紹介したが、このことは、(A)社会的にリスクマネー供給が減少する可能性、(B)金融機関が手数料稼ぎをしにくくなる可能性、(C)個人(高齢者本人と相続人)の資産運用効率が低下する可能性の3つの立場からの心配につながる。

 リスクマネー供給については、投資に値する企業やプロジェクトがあれば、間接金融からも、高齢者以外の世代からも、海外からも供給されるだろうから、筆者はあまり心配していない。多数のベンチャーキャピタルが、少数の有望ベンチャーに投資したがって集中している様子などを見るに、日本で問題なのはリスクを取る資金の供給よりもその受け皿となるビジネスの方だろう。

 また、金融機関のビジネスは明らかに金融機関の問題なので、ほっておいていい。もっとローコストな(そのことが同時にハイクオリティを意味する)金融商品・サービスでビジネスを成り立たせる企業努力が必要だ。