最近では、交際費についてうるさくなってきたので、接待という習慣が少しだけ薄れてきたような印象を受ける。バブル期のように料亭で豪勢な接待をしているのは、慎もうという風潮があるのだ。
しかし、「食事をする」というのは、お互いに腹を割って話すときに、かなり効果的な方法であることはいうまでもない。
お腹がいっぱいになって満足感を味わうと、私たちはだれしも饒舌(じょうぜつ)になるものである。それはお酒を飲みに行けば、すぐに理解できる。どの居酒屋に入ってみても、そこにはお客の高らかな笑い声が絶えない。愚痴や不満などを大声でしゃべっている人たちも多い。
食事をさせたり、お酒を飲ませれば、別に高度なテクニックを使わなくとも、相手のホンネや意見をはっきりと聞き出すことができるのだ。
人は満腹になると
饒舌になる
説得技法のひとつに、「ランチョン・テクニック」と呼ばれる方法がある。
ランチョンというのは、「昼食」のことであって、「昼食を一緒にとれば、それだけお互いの親密感が高まる」という、欧米のビジネスマンがよく利用する方法だ。日本人の場合には、夜の接待のほうがどちらかというと主流であるから、「ディナー・テクニック」と言い換えてもいいだろう。
部下の勤務態度がどうにも目について、やる気も感じられないとしよう。こんなときは、「どうした?何か悩みでもあるのか?」と問いただしてみても、部下のほうは、すぐにホンネを語ってくれないかもしれない。
ところが、「ちょっとお腹すかないか。何かつまみながら、話でもしようや」と食事に連れ出すと、思わぬホンネを聞き出せるかもしれない。満腹にさせれば、それなりに快の状態になり、それによって部下も口を開くようになるのだ。