「中国と米国の映画産業を比べるとその差はじつに大きい。その最たるものがSF映画だ。われわれが乗っているのは自転車だとすれば、あっちはフェラーリなんだから」

ポケットマネーから
100万元を投じて準備

 しかし、文学の分野では、中国人の作家が業績を残し始めていた。

 15年8月23日、世界のSF文学分野で最も栄誉のある「ヒューゴー賞」が発表され、中国の作家・劉慈欣が執筆した『三体』が長編小説部門最優秀賞を受賞したのだ。アジア人で初めての受賞だ。

 まもなくして、郭帆は映画製作会社の大手、中影制片公司の社長から呼ばれた。そこで『流浪地球』の映画化を打診されたのだ。

 実は、中影制片は郭帆に話を持っていく前に、ジェームズ・キャメロンやアルフォンソ・キュアロン、リュック・ベッソンといったそうそうたる映画監督のもとを訪ね、「監督を引き受けてほしい」と頼んだものの、きっぱりと断られた。さらに中国の有名な監督にも当たってみたが、やはり断られた。

 中影制片の意向を知った郭帆は、自分のポケットマネーで100万元の資金を投じ、早速動き始めた。

 50年後の世界を具現化するために、郭帆は3000枚ものコンテンツイメージを描いた。惑星エンジンから、地下都市、運搬車まで、あらゆるシーンの細かいイメージを描き、絵コンテは8000枚にもなった。

 まだ契約さえ結んでいない段階であるにもかかわらず私財を投じ、準備作業を黙々と進めた。

「命がけでこのチャンスをつかみたかった。そのために、こんなに準備を進めているんですと見せた方が出資者の心を動かすことができるだろうと考えた。たとえ最終的に失敗したとしても、悔いは残さずに済む」と思ったからだ。