『大漁グループ』の総帥の丁家順
丁さん自ら店舗で技術指導をすることも Photo by N.N.

 出資の代わりに丁が選んだのは、資金の借り入れだった。しかし、繁盛しているとはいえ、まだ創業からわずか数年、3店舗しかない「大漁グループ」に融資をしてくれる金融機関はなかった。

 そこで丁は勝負に出た。以前、常連客から紹介された“金融業”の男に連絡を取ったのだ。男は、初老の日本人。香港に拠点を構える山口組系の経済ヤクザで、大陸でヤミ金を営んでいた。

「サエキさんって日本人。一見、紳士風よ。でも、目つきが一般の人間とは明らかに違う。すぐにピンときたよ。あ、黒社会の人間だなって」

 カネの集まるところには、必ず暴力団の影がある。経済が沸騰しはじめた90年代の中国は、経済ヤクザにとってまさに新天地だった。特に山口組の動きは速かった。

 90年代の前半から香港を拠点にして、広州、深セン、上海といった大陸沿岸部の大都市に触手を伸ばし、日本企業や駐在員ばかりでなく、丁のような飲食業の中国人相手に金融業や投資を行っていた。結局、丁はサエキから10万米ドルを借りることにした。

「私の店にキャッシュで持ってきたよ。金利は月3パーセント。無担保だよ。彼もアホじゃない。中国で中国人相手に商売するんだから、並の男じゃないよ。融資実行までにうちの既存店舗の状態を調べ上げ、確実に返済可能と見たから貸してくれたんだ。何度も一緒に食事をし、俺の人格も見た上で、『丁社長なら間違いない』と」

 とはいえ、相手はヤクザである。不安はなかったのか。

「相手もビジネス。こっちもビジネス。俺は自分の商売に絶対の自信を持っていたから、まったく不安はなかった。それよりも思ったのは、俺、つくづく日本人に助けられるなあと。日本と縁があるなあって」