加えて、「日本経済のゼロ成長」というのは、普通の業界にとっては「前年並みの売り上げと利益」を意味するが、銀行業界にとっては意味が違う。借り手が、配当しなかった利益を借入返済に回すため、前年より貸出残高が減ってしまう要因となるのだ。

 貸出残高が減れば利益が減るので、銀行は「リスクの高い先にも貸す」「ライバルの客を奪うため、貸出金利の引き下げ競争を繰り広げる」といった誘惑にかられることになる。

 そうなると、既存の融資先が危なくなっても、追い貸しをするインセンティブさえ出てくる。倒産されてしまうと今期に損が発生するが、追い貸しをしておけば今期には損が発生しないからだ。

人事評価システムに
問題の一因が

 貸し出しが不良債権化したとき、誰を罰するのか(誰の人事考課を引き下げるのか)は、難しい問題だ。貸出時の稟議書には係員から支店長までの印が押してあるのが普通だから、その全員を罰するという選択肢はあろう。しかし、話は簡単ではない。

 そもそも30年前に取引を開始して以降、3ヵ月ごとに借り換えをしてきた借り手が倒産したとして、いつの時代の担当者を罰すべきかといった問題がある。また、「借り手が多少傾いたとしても、回収するより追い貸しをして借り手の回復を待つべきだ」という判断を、これまでの担当者がした場合もある。その場合、今の担当者を罰するのは気の毒だ。

 とはいえ、貸し倒れが生じたタイミングの担当者を罰する人事システムとなっている場合も多い。そうだとすると、現在の担当者には、次の担当者に引き継ぐまで追い貸しをして借り手を生かしておくというインセンティブが生じる。