もちろん、安倍政権が恣意的に統計をいじくりまくり、GDPをカサ上げしたとするならば、深刻な問題だ。本当にそんなことがあったのか、真実を明らかにするまで徹底的に追及する必要があると思う。

 一方で、経済政策としての「アベノミクス」を批判したいのならば、これは本質的な問題ではないとも思うのだ。なぜなら、今回問題となっている期間の「GDPの上昇」とは、アベノミクスの「第一の矢」「第二の矢」の効果を計るものだと思うからだ。

「第一の矢」「第二の矢」とは端的にいえば、「失われた20年」と呼ばれた長年のデフレとの闘いに疲弊し切って、「とにかく景気回復」を望んでいた国民に一息つかせ、世の中の暗い「空気」を明るく変えるための「異次元のバラマキ」だった(第58回)。そして、「空気」が変われば、国民の沈み切っていた気分が上がり、おカネを使うようになる。経済活動も活発化するという狙いだった。

 これを言い換えれば、「第一の矢」「第二の矢」では、「空気」さえ変わればよかったということではないだろうか。だから、アベノミクスが目標とした「物価2%上昇」がなかなか達成できなかった時、「ヘリコプターから現金をバラまく」ように日銀が対価をとらずに大量の貨幣を市中に供給する「ヘリコプターマネー」の実行が主張されたり、「バラマキをしても、将来の増税が予測されると国民は消費を増やさないので、増税をしないと政府がコミットすべき」などという「珍説」が取り上げられたり、とにかく「空気」を変えることばかり強調されたのだ。

 だが、本来アベノミクスの「本丸」は、「第一の矢」「第二の矢」で世の中の「空気」を変えて時間を稼いでいる間に、「第三の矢(成長戦略)」を実行することだったはずだ。日本経済の本格的な回復には、これからの日本を牽引する新しい産業を育成する「第三の矢」が重要だからだ。

 だが、アベノミクスに「まだマシ」という評価が定着している一方で、「第三の矢」については、その成果がどうなのか今一つわからない。アベノミクスは始まって以降、「カネが切れたら、またカネがいる」ということが繰り返されてきた。異次元緩和「黒田バズーカ」の効き目がなければ、さらに「バズーカ2」を断行し、それでも効き目がなく、「マイナス金利」に踏み込んだ。補正予算も毎年のように組まれてきた。2019年10月に予定される消費増税についても、2兆円規模の経済対策が組まれることになっている(第163回)。

 これは、「第一の矢」「第二の矢」が繰り返されても斜陽産業を助けてきただけで、「第三の矢」が日本経済を牽引する新しい産業を生みだせていないということだろう。安倍政権は「第三の矢の効果が出るには、時間がかかる」と説明してきた。だが、アベノミクスが始まってからもう6年も経っている。そろそろ「第三の矢」の評価をしていい頃ではないだろうか。