ビジネス的に成功を収めた人から、市井に生きる名もなき人まで、さまざまな分野にいる在日中国人を紹介するDOL特集『隣の中国人“ディープチャイニーズ”たちの肖像』。第14回は、前回に引き続き、さまざまな業態の飲食店を中国40都市で、約300店舗展開する中国最大規模の和食チェーン『大漁グループ』の総帥の丁家順(49歳)を取り上げる。今回は、どうやってチェーンを構築して成功を果たしたのか、そのビジネスモデルを探った。(ライター 根本直樹、取材協力/『東方新報』)

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隙を見せたら根こそぎ
持って行かれるのが中国

セミリタイアした現在の丁さんセミリタイアした現在の丁さん

 今や、中国全土に300店舗以上を展開する一大飲食チェーンに成長した「大漁グループ」だが、1996年の創業から数年間は、上海市内で数店舗展開するだけの小規模なローカルチェーンにすぎなかった。

 しかし、2000年代に入ると、急激に店舗を拡大。それとともに、中国の都市部で日本風の鉄板焼きが大ブームとなったのだ。全国展開の契機は何だったのか。丁は語る。

「最初の店をオープンさせた当初は、チェーン展開なんて考えたこともなかった。ただの個人店。俺は社長と言うより大将。自ら包丁を握って、和食を提供するだけ。店はあっという間に大人気になったけど、あの頃の俺は経営よりも料理を作ることに命を懸けていたよ」