一流と超一流の違いを生む「洞察力」は
読書で養われる
これからの時代は
超一流でなければ生き残れない
政治はともかく、つねに苛烈な国際的競争に晒されているビジネスの世界では、
変化のスピードは、さらに目まぐるしくなる。
変化が日常化した環境下でビジネスを成功させるには、
洞察力は絶対に欠かせない。
その意味では、これからの時代は超一流でなければ生き残れない。
二流は言うに及ばず、洞察力に乏しい一流のままでは、仕事がなくなっても文句は言えない。
たとえば、20世紀までの自動車は例外なく
4輪で内燃機関のエンジンを積んでいるのが常識だった。
現在では内燃機関のエンジンの代わりに、
ハイブリッドエンジンを積んで走っている自動車が増えてきた。
それどころか、EV(電気自動車)が積んでいるのは、
エンジンではなくモーターである。
将来的には次世代の移動手段として、
数人が乗って空も飛べる「空飛ぶ車」(スカイ・カー)が登場する日も近いという。
そうなってくると、4輪で内燃機関のエンジンを積んでいる時代に世界を席巻した
トヨタやホンダといった日本企業が生き残れるかどうかは、
彼らが自動車の未来図をどう描けるかという洞察力の勝負になってくる。
人材と同じように、洞察力のない企業はせいぜい一流止まりであり、
超一流同士がしのぎを削るグローバルマーケットからの退場を余儀なくされる。
堀 紘一(ほり・こういち)
1945年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、73年から三菱商事に勤務。ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction(Baker Scholar)を日本人として初めて取得後、ボストンコンサルティンググループで国内外の一流企業の経営戦略策定を支援する。89年より同社代表取締役社長。2000年6月、ベンチャー企業の支援・コンサルティングを行うドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。05年9月、同社を東証1部に上場させる。現在、取締役ファウンダ
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「教養」とは何かを知ることが
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【著者からのメッセージ】
人生には大切なものが2つある。
1つは「友人」である。
趣味・嗜好が合い、何事も胸襟を開いて忌憚なく語り合える友人は、人生を豊かにしてくれる宝物だ。私にとっては財務相などを務めた故・与謝野馨さん、音楽家の三枝成章さんがそうであり、ヒロセ電気の社長だった故・酒井秀樹さんがそうだった。
利害損得を考えないで付き合える友人が何人いるか。
それは、その人間の懐の深さと器の大きさを反映している。
ネット社会には数々の問題点が指摘されているが、一方で共通の趣味を持つ人を見つけやすくなったのは、見逃せないメリットだ。
もう1つ大切なのは、「学習歴」である。
学歴という言葉があるが、この「学」と「歴」の間に「習」を入れると、「学習歴」という言葉になる。
私は学歴を信じていない。
それは、次のような経験があるからだ。
私が創業したドリームインキュベータでは、毎年数人の新卒採用枠に数千人ものエントリーがある。
いまは現場を退いているが、かつては私も入社希望者に面接をしていた時期があった。
面接では、世間的には名の通った名門高校から名門大学に進み、学歴は申し分なくても、「大学4年間で一体何を学んできたのか?」と問いたくなるような魅力のない人間に大勢出会ってきた。
東大卒、京大卒、ハーバード大卒といった最終学歴がどんなに立派でも、学んで習う習慣を持たない者は伸びない、魅力がない。
本来は「学歴≒学習歴」なのだ。
しかし、有名大学に入るだけで満足してしまい、学びを得ないままで卒業した人間は学習歴に乏しい。
感性も知性も人生でもっともみずみずしく、人間としてもっとも成長できる時期に、自分に何も投資しないのは極めて愚かな選択である。
学歴の代わりに私が信じているものこそ、何を学んできたかという学習歴だ。
たとえ学歴がないとしても、学習歴が豊かな人は人格的にも優れているし、学んで習うという習慣を忘れないから、ビジネスパーソンとしてだけでなく、1人の人間として成長し続ける。
その学習歴を作ってくれる手段が、読書なのである。
さきほど触れた酒井さんは、多極コネクターで業績を上げて、ヒロセ電気を売上高経常利益率が3割という超優良企業に育て上げた中興の祖である。
彼は東京都立港工業高校の出身で、大学は出ていない。
エンジニアとして極めて優秀だった。
それに甘んじることなく、読書で経営感覚を徹底的に磨いた。
学歴を学習歴が凌駕した好例である。
自分には自慢できる学歴がないと思っている人も多いだろう。
しかし、そんなことを思っている暇があったら、寸暇を惜しみ、せっせと読書に励むべきだ。
読書で学習歴を積み上げられたら、学歴は気にしなくていい。
学歴は一流、超一流へと近づく方法ではない。
読書で教養を磨き、洞察力を高めるのが超一流への近道なのである。
若いときから読書習慣をつけるのが理想だが、読書に年齢の壁はない。
何歳から読書に目覚めても遅いという話にはならない。
大学を卒業してビジネスパーソンになってから、もう一度大学に入り直して学歴を更新するという方法もある。
日本では大学は学生だけが行くところだが、欧米では社会人が大学で学び直して、再び社会に戻るケースは珍しくない。
社会人が就労に活かすために学び直す「リカレント教育」が日本でもようやく注目されるようになってきた。
しかし、まだまだ学び直したい社会人を受け入れる土壌が整っているとは言い難い。
ならば、学び直して学歴を更新するのではなく、読書で学習歴と高めるという選択肢を選ぶほうが賢明である。
心から共感できる友人がいて、その友人と読書と介した学習歴を高め合う関係を築けるのが理想である。
私にとって三枝成彰さんは、いまでもそういう得難い存在だ。
読者の皆さんにも、これから生涯に渡って読書によって学習歴を高め、豊かな人生を歩んでもらいたい。
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<目次>
第1章 二流から一流へ成長する読書術
第2章 AI時代を生き抜くための読書術
第3章 ほしいと思われる人材になる読書術
第4章 読書力を引き上げるコツ
第5章 読書こそが私という人間を作ってくれた