「豪快でかつ繊細な方だ。彼は日本の改革に残りの人生を費やすつもりだ。そろそろ行動を起こすつもりなんだろう。彼の強みは、与野党ともに彼の言葉に耳を貸す議員がいることだ。これはなんでもないことのようだが、彼らの世界では大変なことなんだ。彼の裏表のない率直な性格のためだろう」
「村津さんは親しい間柄なんですか」
「彼が建設大臣時代、秘書をやったことがある。人使いの荒い人だったが、根は思いやりのある情の深い人だ。そして、それなりの成果を出す人だった。また、人を見る目もある」
「道州制の導入を掲げておられました。そのためには首都移転が欠かせない、とも言っておられました」
「彼の長年の持論だ。たしかに接点は多い。私もこの二つは同時に考えなければならないと思っていた。地方分権とそれに伴う小さな政府の実現は、首都移転に欠かせないものだ。小さな政府であれば、最新ICT技術の活用によって、新首都は従来では考えられなかったほどコンパクトでかつ機能的なものが実現できる。場合によっては、国会議員は地元にいながら国会に参加できるシステムを作ることも可能だ」
「だからユニバの玉井社長とお会いになっていたんですか」
「彼とは血縁はないが親戚にあたる。妻の従兄なんだ」
だったらよけい危険だと思った。マスコミの書きようによっては、どうにでもなる。
(つづく)
※本連載の内容は、すべてフィクションです。
※本連載は、毎週(月)(水)(金)に掲載いたします。