5月23日の記者会見で、日本銀行の白川方明総裁は外債購入オペの可能性を従来通り否定した。市場の一部では、外債購入オペのメリットとして、(1)円安誘導が期待できる、(2)残存期間が短めの日本国債の利回りが異様に低下して、国債買入オペで「札割れ」が発生している。同オペの追加余地が限られているなら、外債購入オペは新たな緩和策となり得る、と指摘されている。
(2)に関しては、確かに、0.1%に近い金利の国債を日銀が購入してベースマネーを増加させても、市場との間で、ほぼゼロ金利の国債と日銀券という「似たもの同士」の交換を行っているようなものなので、景気刺激効果は小さい。また、日銀の年間の国債購入額は、今や政府の年間の新規国債発行額44兆円に迫る巨額ぶりだ。日銀が今後さらに「国債消化マシン」の様相を強めていくことは、危険な面をはらんでいるため、他に適切な資産が存在するなら、追加緩和策の際はそれを選択すべきともいえる。
日銀政策委員会は、2001年に外債購入オペについてかなり前向きな議論を行ったことがある。しかし、同年11月の金融政策決定会合で財務省の出席者から、日銀法第40条第2項は、財務省の指示がなければ日銀は為替相場の安定を目的とする売買は行えないと規定していると指摘され、それ以降、日銀内でその議論は後退した。
日銀法が日銀に課している使命は、「物価の安定を通じて健全な国民経済の発展に資すること」である。日銀が「デフレ脱却のために外債購入オペによる円安誘導が必要だ」と主張し続ければ、それは国内的には法律上の一つの正論と見なせなくもない。しかし、白川総裁は、最近の海外での講演で、先進国間で自国通貨安を狙う金融緩和競争を繰り広げることは不毛であり、長期的弊害が大きいことを示唆している。