2020年の大学入試改革、私立大学での入学定員の厳格化による浪人生の増加…こうした動きへの不安感から、少子化にもかかわらず中学受験をする子どもの数は増えている。
そのようななか、今年の中学受験の動向には大きな変化があったという。中学受験家庭の学校選びは多様化しつつあり、ブランドや偏差値、有名大学の合格実績だけにこだわらず、中高6年間の教育の“中身”をじっくりと見極める家庭が増えてきているのだ。
こうした動きも含め、最新刊『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』が話題となっている、進学塾VAMOS代表の富永雄輔氏に今年の動向について語ってもらった。
ブランドだけでは選ばれなくなった
「間違いなくいえるのは、合格発表後、わが子の進学先に迷う家庭が増えているということです」富永氏は開口一番そう語った。
「従来であれば絶対に迷わないはずの選択肢に悩む家庭が増えてきました。例えば御三家合格を辞退して他校に進学するケースが増えています。そしてこれは上位校だけに限りません。中学受験全体として、これまでのように偏差値や有名大学への合格者数といった指標だけで判断せず、6年間の教育や学校生活の中身をしっかりと吟味している保護者が確実に多くなっています」
時代の変化に対応した教育のアップデートに努力を惜しまない学校は、親としてはやはり心強い。今や学校によっては入学前からタブレットが支給され、春休みにはタイピングの練習を課題に出す学校も珍しくない。IT環境だけではなく、プロジェクト型の学習スタイルでリーダーシップやプレゼンテーション力、コミュニケーション力など、21世紀型スキルと呼ばれる力の育成にも力を入れる学校が確実に増えている。
「伝統校のようなブランド力がなくても、その学校が何を目標に掲げ、どんなコースを設けているのか。今の親御さんは、その内容まで研究し尽くした上で進学先を選ぶようになってきています。中高の6年間は長く、そして人格形成にも大きな影響を与える重要な時期です。だからこそ、納得のいく学校選びをしようというご家庭が増えてきているのです」