開成・麻布・筑波大駒場・渋谷幕張…。東京・吉祥寺の進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないのに有名難関校に続々合格させると話題の塾だ。男女別カリキュラムを取り入れたロジカルで科学的な学習法は、特にエリート父親層から圧倒的な支持を集めている。本連載では、VAMOSの代表である富永雄輔氏の最新刊『男の子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)の内容から、子どもの計画・理解・反復・習慣のプロセスを体系化した「男の子の特性」に基づく学習法をお伝えしていく。
男の子は劣等感を抱くのが最大の恐怖
男性というのは、子どもであろうと大人であろうと、プライドが高い生きものです。母親からすれば、なぜそんなことにこだわるのか不思議に思えるかもしれません。
プライドとは、いわば自分を守ろうとする本能。自分が価値ある人間であることを相手に認めさせたいという表れです。男の子だって「男だからしっかりしなくては」という強い思いを感じて生きています。
それなのに、「なんであなたはできないの!」とか「男なのに!」と否定したりすれば、とたんに劣等感を抱いてしまいます。男の子は鈍感な半面、傷つきやすいのです。
これは、強いオスが子孫繁栄の権利を持ち、弱いオスは消えていくという生物学的な進化と関係しているようです。男の子は、自分が劣っているのを認めるのが怖いと感じるようにできているのです。だから、自分の弱さを隠そうとするし、できないことを正当化するので言い訳が多くなりがちです。
そんな男の子を否定するような言い回しは、できるだけ使わないようにしましょう。自己肯定感や自信をなくしてしまいます。それより、良いところをいかに「認めて」あげるかを考えてください。
また、誇り高い男の子に対して、あれこれと指示や命令をするのも、男の子の自尊心を傷つけ、逆に反抗心へと変えてしまう傾向があります。
とくに父親は、なにかにつけて仕事モードになり、あたかも部下に接するように子どもに物を言います。
もちろん、父親は「よかれと思って」それをやっています。いずれ社会に出て戦わなくてはいけない男の子に対して「強くあってほしい」と願うからこそ、「もっと頑張れるだろう」「自分でよく考えろ」などと言いがちです。
父親にそうどやされれば、男の子は「うん、わかった」と言うでしょう。その返事を聞いて、父親は「納得してくれた」と思うかもしれません。しかし、子どもは納得したのではなく、「お父さんに怒られないようにしよう」と考えて、そういう行動を取っているだけです。
男の子は自分の存在価値を否定するような物言いには、とても傷つきやすく、そうする相手には徐々に敵対心を持つようになります。プライドを傷つけるような言い方には注意してください。
小学生の男の子は、まだまだ甘えん坊です。しかし、その幼さこそが、あるとき大きな集中力を生み、ブレークスルーにつながります。
それまでは、上手く大人たちの手のひらの上で転がしてあげましょう。
【著者からのメッセージ】
<大反響! 連載人気ランキング>
第1位:「男の子の学力」を伸ばすために親が知っておきたい育て方
第2位:男の子の学力は「机に向かう姿勢」で9割決まる
第3位:男の子の「折れない心」を育てるためのコツとは?
私は、「進学塾 VAMOS(バモス)」の経営者として、「入塾テストなし・先着順」と生徒を選抜することなく、多くの子どもを難関校へと導いてきました。
「どんな子でも必ず伸びる」という確信が、私にはあります。こと「伸び率」に関して、私はどこの学習塾にも負けない自信があります。それは単に実績の話だけではなく、再現性のある学習メソッドを取り入れているからです。
具体的には本書のなかでお伝えしますが、学力を伸ばす勉強には、明確なロジックがあると考えています。
多くの人は学力をセンスや才能のたまものだと考えていますが、実際にセンスが必要となるのは、ごく一部の天才同士の戦いに限られます。ほとんどの子どもにとっては、そもそもセンスは必要ありません。
また努力は必要ですが、どれだけ長時間勉強しても、正しい努力でない限り結果がともなわないのは、社会人にとっての仕事とまったく同じです。
本書は、学力が伸びるメカニズム、「わかる」ことのブラックボックスを可視化しながら、どんな子でも学力を伸ばせる考え方や手法をお伝えします。
•勉強はしているのに、どうしても子どもの成績が上がらない
•子どもの中学受験を考えていて、もっと効果的な勉強法を知りたい
•受験勉強には反対だが、子どもに将来役立つ学力を身につけてほしい
•子どもに自分から勉強してもらいたいと思っている
•自由放任で育てたら、子どもが全然勉強しないと悩んでいる
•夫婦間で、子どもの勉強への取り組みに熱の違いがある
こうした方に、本書はとくにおすすめです。
多くの人は、子どもの学力を伸ばすために、問題を解く魔法のノウハウや、「センスのいい考え方」を期待するかもしれません。しかし、そうしたものは存在しません。
学力が伸びるプロセスを分解すれば、基礎となる知識の「点」を増やして、それを効果的につなげて「線」にしていくということです。言い換えると、「つながる」ということが、「わかる」ということです。
算数には問題を解く土台としての「九九」がありますが、実はほかの教科にも「九九」にあたる基礎があります。それを反復トレーニングで学び、基礎同士を上手につなげること。学力が伸びる構造は、センスではなくロジックなのです。
本書では、男の子の学力を伸ばすために、親ができることすべてを紹介しました。
まず、序章で「学力を伸ばす基本的な考え方」をまとめています。第1章では、「男の子の本能的な7つの特徴」について、第2章ではその特徴を活かした、「学力を伸ばす5つの絶対法則」について解説します。
第3章では、「考える力を養う13のコツ」、第4章では男の子がとくに苦手な「目標・計画術のテクニック」を紹介します。第5章は、具体的に、算数・国語・理科・社会の成績を効率的に上げる「必修4教科の勉強法」を細かく見ていきます。そして、第6章で男の子が「自主的に学習するための習慣づくり」を、最後の第7章では、「成績を伸ばせる親の習慣術」をまとめていきます。
本書は、あくまで学力を伸ばすための入口に限定していますが、そのために親ができることすべてを1冊で網羅した内容となっています。試せるところから、ぜひ実践してみてください。
子どもたちには、親が考えている以上に潜在的な力があります。
左脳が発達していない男の子は言葉足らずで、親から見るとなんとも頼りなく感じるはずです。しかし、彼らはあるとき、ちょっとしたきっかけで大化けします。ここが、男の子の面白いところです。
本書が、その能力を引き出す一助になれば、著者としてこれ以上嬉しいことはありません。