進学塾VAMOS(バモス)には入塾テストがない。先着順で受け入れるので、生徒たちの学力はバラバラだ。この状態から各々の学力を伸ばし、灘、筑波大附属駒場、開成、麻布、桜蔭、豊島岡といった難関校へ76%も合格させる。“中学受験で第一志望に進学できる子の割合は約3割”の狭き門。大手塾をもしのぐこの抜群の合格率には、一体どんな秘策があるのだろうか。VAMOSの代表であり、昨年12月に『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』を上梓した富永雄輔氏に話を聞いた。

8割の生徒が難関中学に合格!「塾の当たり前」をやめた効果

クラス編成は成績だけで決めない

 VAMOSではコース編成を成績順の紋切り型にはしない。成績に加えて性別、そして性格の違いでクラスを分けている。つまり子どものタイプによって、恥ずかしがらずに思う存分質問しやすい環境を選んでやるのがVAMOS流だ。教える側も、分け方さえうまくやっておくと教えやすいのだと代表の富永雄輔氏はいう。では子どものタイプはどのように見分けるのか。

8割の生徒が難関中学に合格!「塾の当たり前」をやめた効果2019年1月に撮影した受験直前の生徒たち。左奥が女の子、真ん中と右が男の子クラスと細かく分かれている。

「東大の理IIIに子供4人を合格させたお母さんが『上3人の息子と同じアプローチは一番下の娘には通用しなかった』と言っていたように、僕も“性差”に注目したところ、クラス環境がみごとに良くなったのです」

8割の生徒が難関中学に合格!「塾の当たり前」をやめた効果富永雄輔(とみなが・ゆうすけ)進学塾VAMOS代表。京都大学を卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生まで通塾する「進学塾VAMOS(バモス)」を設立。現在、吉祥寺、四谷、浜田山校(今冬開校)の3校を開校。入塾テストを行わず、先着順で子供を受け入れるスタイルでありながら、毎年首都圏トップクラスの難関校合格率を誇り、日本屈指の“成績が伸びる塾”として「プレジデントファミリー」「アエラウィズキッズ」「日経キッズプラス」などに登場。論理的な学習法や、子供の自主自立を促し、自分で考える力の育成に効果的と、特に医者や弁護士などの高所得者の父親から圧倒的な支持を集めている。著書に『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』等がある。

 確かに昔から「男の子は国語が苦手。叱れば伸び、ラストスパートで追い上げが効き、最後の最後に逆転可能」「女の子は算数が苦手。褒めれば伸びる、コツコツやれる、成績順で合否が決まる」というのがステレオタイプとされてきた。

「脳科学的にも、男女の発達の差があることは証明されています。大人になれば、男女ともそれぞれ苦手分野をカバーできますが、脳が成長途上である子どもにはその影響が大きく出ます。だからこそ、性差に着目した学習が大きな効果を上げるのです」

 それが今回、富永氏が『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』という、著書を2冊にわけて上梓した理由でもあるのだそうだ。

 いっぽうで面白いことに「現場では全ての生徒がきれいにステレオタイプに当てはまるわけではない」と富永氏はいう。男の子でも女の子タイプの子、女の子でも男の子タイプの子が必ずいるものだと富永氏は指摘する。

「たとえば女の子なら、一般的には本にも書いたように、きれいにノートをまとめる、失敗を避けるため細かい計画を立てるのが得意です。でも実際には行きあたりばったりで、ギリギリまで追い込まれないとやらない男の子のようなタイプの女の子もいます(笑)。一方男の子でも、ノートがきれいで細かい計画を立ててコツコツやれる子もいます。だからVAMOSでは、男の子にも女の子にもそれぞれ2パターンのアプローチを準備しているのです。つまり男の子、女の子的な要素のある男の子、男の子的な要素がある女の子、女の子という4つのタイプに分けています」

 周りの空気を読むのが苦手な女の子なら、男の子に混ぜてあげたほうがのびのびと発言できる。エネルギッシュな空気にのまれてしまう男の子なら、むしろ女の子に混ぜてあげると安心して勉強に励める。こうしてVAMOSでは、一人ひとりの生徒がどのタイプかをじっくりと見わける。

「大手塾だと成績順でばっさり区切られますが、そこには必ず合わない子、潰れてしまう子が出てしまうんです。うちは少人数指導なので、そういう子には性格的な部分を見て環境を変えてあげるとものすごく伸びます。学力はストレスがあると絶対に伸びません。勉強自体がストレスがかかるものだからこそ、できるだけ余計なストレスは削ってあげたい。クラス編成は子ども一人ひとりの成長にとって非常に大事なことですから」

 脳科学的には、成人男性の約15%が女性脳を持ち、女の子の約10%が男性脳を持っているといわれているが、富永氏曰く、経験的に小学生だと男女ともそれぞれ3割くらいはいるのではないかと語る。一人っ子で母親の影響力が大きかったり、姉の影響が大きい弟などは、男の子でも女の子的な要素が強くなる傾向がある。また最近では、女の子は「箱に入れて大事に育てる」というより「精神的・経済的に自立させたい」と考える親が増えており、女の子の中にも男の子的な要素が強くなってきているという。

「男の子なのに、あるいは女の子なのに、なぜうちの子は…?と親御さんが悩んでいる場合には、逆のアプローチをしてみると案外しっくりくるかもしれません」と富永氏。男の子でもあえて『女の子の学力の伸ばし方』を、女の子でもあえて『男の子の学力の伸ばし方』を読んでみると、「その子らしさ」に合わせた学習法が見つかる可能性が高いようだ。