年金運用は国家戦略
そのものである
AIJ問題以降、わが国では、年金資産の運用について、その監督・規制のあり方や運用ルール・体制についてなどを巡って、様々な指摘がなされている。
この問題を通じて浮かび上がった重大な問題の一つが、国民資産である年金基金資産の管理・運用のあり方についてである。
米国では、すでに今から約40年も前の1974年に、年金加入者・受給権者の利益を保護するためにエリサ法(ERISA=Employee Retirement Income Securities Act・従業員退職所得保障法)が制定され、管理者・運用者の行為基準について、受認者の忠実義務(fiduciary duty)を含め明確に規定したが、その後も次々に補強され今に至っている。
エリサ法は、
(1)年金ガバナンス
(2)コーポレート・ガバナンス
(3)投資分散
の3点において米国の資産運用のみならず、経済の活性化や企業統治にまで大きな影響をもたらした。
もちろん、日本でも、確定給付年金法などによって、事業主や基金理事の行為準則、積立金の規制、運用指針などが一応定められているが、それは飽くまでも厚労省という庭の「マニュアル」でしかない。米国が、エリサ法を出発点にして、年金運用のあり方を、いわば国家の成長戦略の軸として活用してきたのと比べると、お粗末としかいいようがない。