正統性の確保という観点から中国共産党にとってどちらが“利口か”といえば、明らかに前者であろう。裏を返せば、中国共産党はそれだけ経済をめぐる現状や先行きを警戒し、政権運営という観点から危機感を抱いているということでもある。

 共産党指導部は警戒と不安で覆われる2019年の中国経済情勢に、どう対応しようとしていくのだろうか。

 李克強は「積極的な財政政策の強度と効率を上げる必要がある」と主張する。財政赤字のGDPに対する比率を2.8%と昨年の2.6%から拡大する。インフラ投資として、今年は中央の予算内で昨年より400億元多い5776億元を見積もった。地方政府がインフラ建設にあてる債券の発行枠を昨年より8000億元増やし2兆1500億元とした。鉄道投資に8000億元、道路・水運投資は1兆8000億元という目標を課した。これら政府主導の政策を通じて景気を下支えしようというのが党指導部の考えであろう。

「穏健な金融政策」に関しても、マネーをばらまくようなことはしない一方で「複数の政策ツールを柔軟に活用しながら、金融政策が機能するためのチャネルを確保すること、流動性が合理的かつ十分である状況を保持していくこと、その上で実体経済、特に民営・中小・零細企業の融資難、融資コスト高の問題を有効的に緩和し、金融リスクを防止していく」としている。

先行きは
楽観視できない

 李克強の報告には、最近党の最高指導者である習近平までもが懸念をあらわにする民営経済・企業への配慮がにじみ出ていた。

 例を2つ挙げてみたい。1つが減税と企業のコスト軽減策で、企業の税負担と社会保険料の負担を2兆元弱軽減する、増値税(付加価値税)の税率を製造業などは現行の16%から13%に、建設業などを10%から9%に引き下げるといった政策が打ち出された。

 次に、上記の融資難&融資コスト高の問題を緩和すべく、李克強は今年大手国有商業銀行の中小・零細企業への融資30%以上増加することを要求している。

 これらの上からの政策は功を奏し、民営経済・企業の活性化につながるのだろうか。

 筆者の限られた観察からすれば、先行きは決して楽観視できない。北京、上海、浙江省、広東省などで民営企業家・個人事業主らと話す限り、近年納税義務が厳格化、その手続きが規範化されたことにより、「これまではあらゆる抜け道を使ってやっていた脱税ができなくなった。まともに税金を払うようになったら会社経営は危機に陥った」(広州市の工場経営者)。