辛く険しい禁煙への道
挑戦者の約50%は脱落する

 禁煙外来を行なっている多くの医療機関では、「バレニクリン酒石酸塩」を処方します。「たばこをやめられる薬」といわれているものです。

 バレニクリンは保険医療が適応となり、3割の負担で3ヵ月間の治療が受けられます。この間の実質の治療費はタバコ代相当です。

 4ヵ月目に入ると、そこから先の治療は保険医療が適応とならず、自費診療になります。

 しかし、ニコチン依存症からの脱却は、想像以上に辛く険しい道である場合がほとんど。最終的な禁煙成功率は50%程度と考えられています。約半数は、誘惑に負けてしまうのです。もし、禁煙を失敗し、再度、保険診療の適応を受けて禁煙外来の門をくぐりたいなら、1年待つルールになっています。

「3」のつくタイミングで
禁断症状が強くなる

 これらの流れのなかで、禁煙を成功させるためのポイントがいくつかあります。

 第一に禁煙宣言です。禁煙を志す人の傾向として、自らたばこを止めようとする行動がみられるようになり、たとえ1日でも2日でも禁煙しようと試みます。

 われわれの日比谷公園クリニックでは、最低限、1日でも禁煙を試みた経験がある患者さんでなければ、お引き取りいただいています。禁煙する意思さえない患者さんには、どのような処置をしても無駄となるからです。

 もし、禁煙の経験がない患者さんが来院された場合は、3日間禁煙できたら、外来に来ていただくよう指導しています。

 第二のポイントは「3」です。

 3日目、3週間目、3ヵ月目、そして3年目――。このタイミングはニコチン中毒の禁断症状が強くなる時期です。3日目の症状としては動悸と発汗があり、苦しみを感じます。3週間目になると、たばこを吸って頭が「ボーッ」とする感覚が恋しくなり、喫煙所の近くから離れられなくなります。なかには、夜中、知らないうちにたばこの自動販売機の前に立っていたという患者さんもいました。

 3ヵ月目は手と口の喫煙行動癖が出てしまう時期です。気が付くと指と唇が反応しています。3年目は感覚器官が邪魔をする時期です。たばこの香り、たばこを吸うしぐさ、これらの反応は遅くまで残ります。最終的にたばこのにおいを嫌うことができるのは3年後です。

 したがって、禁煙治療の開始から3年が過ぎるまでは成功とはいえません。特にアルコールが入ると、感覚器官が昔を思い出すため、飲酒時に喫煙するという、いわゆる機会喫煙者となりがちです。