職場で「別の自分」を演じていないだろうか。
上司や同僚の目を気にして本音を隠してしまうと、チームの力は半減する。『ワークハック大全』は、Googleやtwitter(現x)などで働いた著者が、科学的に「働き方を楽しくする30のメソッド」を紹介する一冊だ。本記事では、世界18ヶ国で刊行された本書のメソッドから、職場の心理的安全性を高める方法を紹介していく。

楽しい職場の風景Photo: Adobe Stock

「笑い」がチームを変える科学的理由

 真面目に働くことは大切だが、職場で常に緊張していては創造性も生産性も下がる。

 本書では、ケンブリッジ大学の調査を通して「笑い」がチームの信頼を強めることが紹介されている。

 2007年のボートレース優勝チームでは、「トップクラスの実力はないが、愉快な性格をした選手」がメンバーに選ばれた。その笑いがチームの絆を生み、レースでの勝利につながったという。

そのメンバーがチームに心理的安全性とポジティブ感情をもたらしたことがレースの結果にどう影響したのかを正確に測ることは難しい。それでも、2007年のレースの10日前、チームは「能力は劣るが、愉快な性格をしているからという理由で選手をメンバーに選ぶ」という常識では考えられない判断をするのに十分な妥当性を感じていた。(『ワークハック大全』より)

 このエピソードが示すのは、「笑い」がチームに心理的安全性をもたらすということだ。

 つまり、失敗を恐れず意見を出し合える空気をつくることで、チームの潜在能力が引き出されるのである。

リラックスが生む「本音の対話」

 オックスフォード大学の研究でも、笑いが人の自意識を弱めることが明らかになっている。

 実験では、コメディ動画を見たグループが、見なかったグループよりも自分をさらけ出す率直な自己紹介をする傾向が高かった。

 笑うことでエンドルフィンが分泌され、他人への警戒心が和らぐという。

エンドルフィンは、自意識を弱めると考えられる。その結果、自分のことを相手に知られすぎたり、“変わっている”とか“好ましくない”と思われたりすることへの不安が和らぎ、親密なコミュニケーションが促される(『ワークハック大全』より)

 定例会議の冒頭で「1分間の小話」や「最近笑ったこと」を共有するだけでも、チームの空気は変わるだろう。

 お互いがリラックスできれば、率直な議論やアイデア交換が活発になりやすい。

「真面目さ」だけではバズは生まれない

 心理的安全性がない職場では、人は発言を控え、無難な言動しかできなくなる。

 著者は、笑いがこの壁を壊す鍵だと説く。笑いは単なる息抜きではなく、チームの創造力を開くスイッチなのだ。

笑いがつくる安全な空間によって、人は自由に考えを述べられるようになる。ダンバーも「笑いは自意識を解きほぐし、自分自身をさらけだすことへの抵抗も弱まる」と言う。当然、このように寛ぎ、常識にとらわれない発想ができるとき、最高のアイデアは生まれやすい。(『ワークハック大全』より)

 現代の働き方では、AIツールの活用やリモート会議の増加など、「冷たい効率化」が進む一方で、人間らしい関係性の再構築が求められている。

 だからこそ、笑いによるリラックスが、チームの「温度」を取り戻す手段になるのだ。

 職場で「別の自分」を演じるより、素のままの自分で笑い合える関係を築こう。笑いは贅沢ではなく、チームの成功を呼ぶための戦略である。