堂場 ただ、「これをやれば絶対お客さんが来る」という決定的な手法って、なかなかないですよね。招待で3回来てくれても、生涯ずっと通ってくれるとは限らない。

高田 皆さん、無料だったり、何かをもらえたら来てくれます。J1昇格が見えてきた試合では、記念のTシャツを1万人に無料プレゼントして、本当にあふれるぐらいお客さんが来てくれました。でも、いつまでもそこに頼ってばかりでは、真の意味の県民クラブにならない。お金を出して応援してくれる人を増やすことが、本来のスポーツ振興ですよね。

堂場 満員になったスタジアムの観客全員が有料客ならば途轍もない額になります。スポーツビジネスとしては当然、目指すべきところでしょうね。

高田 どのようなバランスを取りながら、お客さんを誘導していくかということですね。

アウェイのサポーターからも愛される秘訣

堂場 今シーズンは、1試合当たりの平均観客数をどのくらいで目標設定されていますか。

高田 1万2000……できれば1万5000人。「J2に下がったけども、観客は増えた、という実績を作ったらすごいよね!」と。それが目標です。

堂場 では、最初の話に戻りますと、アウェイのお客さんが増えたのはなぜでしょうか。

高田 僕は、ホームとアウェイ、敵味方に分かれて戦うだけじゃなく、互いに交流を深めることでサッカー人口を増やせるんじゃないかと考え、ずっと実践してきました。

 シーズン中、マスコットのヴィヴィくんと一緒に、ほとんどの試合を観に行ったんです。アウェイのサポーターさんたち数百人と会話したり写真を撮ったり、時々サインを頼まれたり。どこへ行っても会話がすごく弾むんですが、その時、言い続けてることがあります。「ここまで仲良くなったから、最後に一つお願いがあります。今日だけ勝ち点3ください!」。そしたらみんな笑って「それだけは勘弁してください」と。毎度その会話で締めるんですけど、サッカーを通してコミュニケーションし、人間同士のつながりを感じられる点は、スポーツの素晴らしさのひとつです。そうした交流を通じて、対戦相手だけど、V・ファーレンも応援していただく人が増えたんじゃないかと思っているんです。

 だから例えば、浦和レッズさんと試合やると、5000人ぐらいのお客さんが、浦和から長崎まで来てくれます。試合の日は、相手のサポーターさんが何千人も、長崎の街を歩いているんです。

堂場  Jの各クラブの社長さんで、そこまでされている方はなかなかいらっしゃらないでしょう。全国を回って試合も観て、相手サポーターと交流して。現場を知るからこその肌感覚で、これからのクラブのあり方を考えておられるのですね。

高田 昨年の春、アウェイの清水エスパルス戦に1−0で勝ちました。しかも、J1初勝利だったんです。僕うれしくて、エスパルスサポーターがいる応援席にバーっと入っていった。その時にみんなと握手しながら言われた「今日は負けたけど、次は勝ちますからね」という言葉しか、僕の頭の中には残っていないです。あとで周りから「あれは危ないからやめてください」と言われたんだけど、全然怖くないですよ。

堂場 いやでも、それは、もしかしたら、高田さんじゃなかったら袋叩きに遭っている可能性が……(笑)。

高田 いやいや(笑)。Jリーグは「百年構想」というスローガンを掲げて、地域のスポーツ振興に取り組んでいますが、勝ち負けを超える、もっと大切なものがサッカーに、スポーツにあるはずです。

堂場 そもそも、自分の応援するチームの社長の顔を知らないという人だってたくさんいると思います。そこはご自身の知名度を最大限に生かされていますね。