>>前編より続く

Jリーグ「V・ファーレン長崎」社長の高田明氏(高の文字は、正式には“はしご高”)。スポーツ小説の旗手として意欲的に作品を発表し、2月末には“球場が主役”の小説『ザ・ウォール』を刊行した作家・堂場瞬一氏。新機軸を次々に打ち出すサッカークラブの経営者、スポーツの魅力や問題点を様々な切り口で描く作家、それぞれの立場からスポーツにかかわる二人が、これからの日本におけるスポーツ振興の形を、縦横に語り合いました。(撮影/泉山美代子、構成/高中佳代子)

高田明氏と堂場瞬一氏Photo by Miyoko Izumiyama

インバウンドで観客増を

高田 長崎には、軍艦島、グラバー邸、世界遺産登録された「潜伏キリシタン」関連遺産など、本当に豊富な観光資源と歴史があります。そして近年、インバウンドで、中国、タイ、インドネシアほか、アジア各地からたくさんの人が訪れるようになりました。地方創生という面でも、街が活性化し、元気になっています。せっかく長崎に来てもらうなら、3泊4日の観光コースの中に、V・ファーレン観戦ツアーを組み込めないだろうか、ということも話に挙がります。

堂場 僕らがアメリカに遊びに行くと、ついでに野球を見てくるのと同じですね。最近では、大リーグ観戦は大体ツアーに組み込まれていて、どこの球場に行っても結構日本人がいます。観光地としてものすごい資源を持つ長崎を、スポーツとの組み合わせによってさらにパワーアップさせて──。

高田 シナジーを生んでいくんです。今のV・ファーレンには、イニエスタさんみたいな海外クラブの有名選手を獲得できるお金はないですが、そういう形ではない集客、サッカーをきっかけに、ひとつの経済が潤う方法を考えていこうよ、と。

堂場 サッカーはとにかく地元。地元のチームを地元の人が応援するもの、人口が少ないところだと、それなりにしか集まらない……とずっと考えていました。インバウンドとか、国内の他の場所から集客するという発想、僕にはありませんでした。野球に例えて言うと、タイガーズのお膝元の兵庫県で、巨人ファンですと言っているみたいなもんですよね。