埼玉をディスった映画「翔んで埼玉」がヒットしている。しかし、この作品に限らず、地方PRの成功法則とは「自虐ネタ」を披露すること。実は、この風潮は昨今に始まったことではなく、古くは吉幾三さんの「俺ら東京さ行ぐだ」にも見られる。そこには、どんな「地方在住者の心理」が隠されているのだろうか?(ノンフィクションライター 窪田順生)
興行収入15億円を突破!
「翔んで埼玉」がヒットする理由
埼玉を徹底的にディスった映画「翔んで埼玉」がヒットしている。
原作コミックは今から30年ほど前に発表されたものだが、2015年にSNSなどで再注目され、復刊されるや50万部を突破。この人気を受けて制作された映画も興行収入15億、動員110万人を突破するなど注目を集めているのだ。
そんな「翔んで埼玉フィーバー」も背中を押して、「埼玉」が躍進しているなんてニュースも出てきている。小江戸・川越の観光人気や、新たに飯能にできる「ムーミンバレーパーク」、さらに住みたい街ランキングでも、これまでベスト10圏外だった「大宮」「浦和」がそれぞれ4位、8位にランクインしてきたというのだ。
そう聞くと、「そんなヘンな映画がヒットするなんて世の中わからないな」と思うかもしれないが、実はこの現象は意外でもなんでもない。この数年で「地方」が躍進する成功法則というか、トレンドをしっかりおさえているからだ。
それは「自虐」だ。
ご存じの方も多いかもしれないが、実はこの10年ほど、自治体のPR活動というのは、「ふるさと自慢」ならぬ、「ふるさと自虐」を競い合うように発表するというのが定番となっている。
例を出したらきりがないが、例えば島根県では知名度のなさを逆手にとって「日本で47番目に有名な県」「島根は日本の領土です」などの自虐コピーで注目を集めた。
魅力度ランキングで最下位にもなった茨城県は「のびしろ日本一」、豊富な観光資源がありながらいまいちパッとしない広島県は、「おしい!広島県」、「ひらかた」と読まれないことが悩みの大阪府の枚方市では「住んでくれるなら、マイカタでもいい」なんてコピーで話題を集めた。