協定案に基づく離脱なら、激変緩和措置として2年の移行期間が設定される。この間に問題が解決しない場合、北アイルランドを含めた英国全体がEUの関税同盟に留まるというバックストップが発動される予定である。ただその後で、英国が関税同盟から脱退する際にEUの同意が必要になる点を、多くの議員が問題視してきた。

 3月11日に開催された英国のメイ首相とEUのユンケル欧州委員長の会談では、EUが英国を関税同盟に拘束し続けることはないという方針が確認され、従来の離脱協定案にその旨を記載した付属文書が追加された。それでも、与党・保守党の離脱強硬派を中心に協定案に対する反対は根強く、英議会は12日にその受け入れを大差で否決した。

 こうした経緯を踏まえると、3ヵ月の延期で事態が前進するとは考え難い。20日までとされる英議会での離脱協定案の議決は再々度否決される公算が大きく、英国側は期日の延長を年単位で要請する見通しである。トゥスクEU大統領のフォローもあり、EUも年単位での交渉延期を容認することになる可能性が高い。

年単位での延期が
メインシナリオになる可能性

 3月21日のEUサミットで、EU離脱交渉を年単位で延期することが決まった場合でも、離脱が実現するか、雲行きはかなり怪しい。北アイルランド問題を解決できる妙案は、なかなか出てこないだろう。この問題はある意味で「神学論争」の様相を呈しており、解決の糸口が全くつかめない。

 そうなると、国民投票の再実施や離脱の意思撤回が視野に入ることになる。ただ、国民投票を再実施しても、実のある解決策がもたらされるわけではない。各種世論調査でも離脱派と残留派が拮抗しており、いずれの派が勝利しても禍根が残る結果になる。また国民投票の再実施は、社会分断をさらに深刻にしてしまう可能性がある。

 重要な決断を再び丸投げしてしまってもいいのかという、議会制民主主義の根幹に関わる問題も問われることになる。すでに英国の政治は、この離脱を巡る騒動で不安定な状況に陥っている。離脱派と残留派を問わず、ここまでの交渉を巡る騒動で有権者の政治不信も高まっていると考えられる。

 また年明け以降、保守党と労働党という二大政党それぞれから複数の議員が離党しており、離脱交渉の難航が英国政界の抜本的な再編に繋がりつつある。両党の執行部としては、その動きに拍車をかけかねない解散総選挙や国民再投票はぜひとも回避したい選択肢になるはずである。