企業にもはびこる
「前例主義」の弊害

 メンバーはきっと合意しているだろう、異論や懸念が聞こえてこないので問題ないだろう――こう判断して暗黙の合意を得ていると思っていたのに、いざ指示や命令をしてもメンバーは全く動いてくれないなどという事例は山ほどある。

 何も言ってこないメンバーが悪いのだと言っても後の祭りで、組織が機能しないことに変わりはない。明示的な、それも腹落ちされた合意プロセスを経ないと、人は動かないのだ。

 特に合意形成をするというルールがないから、合意形成の必要はないというのは、早合点である。ルールという「木」ばかりを見て、組織全体の実際の運営という「森」を見ずという状態に陥ってしまっては、本末転倒だ。

 文言のチェックをし過ぎるあまり、魅力のないセールス資料が出来上がってしまったり、ルールにのっとることばかりを重視して本質を議論しなかったがために、中途半端な投資をしてしまい、成果が生じなかった経験をしたことのある人も少なくないはずだ。

 そして、私には最も深刻だと思えることが、前例踏襲だ。過去にやっていたからといって、今日の目的にかなうとは限らない。環境は日々変わる。それに合わせて、制度やプロセスを日々、修正し続けなければならないというのは、ビジネスでも政治でも当たり前のことだ。にもかかわらず、民主主義の時代にそぐわない、無投票当選規定という大正時代の遺物をいまだに引きずり続けることは、あまりに愚かである。

 無投票当選規定の問題を、役所や議員のやっていることだからさもありなんと笑い飛ばしてはならない。あなたの会社にも、大なり小なり、似たような悪しき通例が幅を利かせていないだろうか。日々のビジネス活動の中で、目的にそぐわない制度や仕組みは、どんどん是正していかなければならない。