残念ながら、日系企業はアジア人に不人気
まず、日系企業のアジアの動向からお話ししましょう。
日系企業のアジアビジネスは、報道では景気のいい話が多いのですが、実はこちらでも日本と同じように熾烈な競争が繰り広げられています。特に韓国企業、中国企業との競争は厳しく、必ずしも順風満帆ではありません。
そんななか、いま日本の経営者が重きを置いているのが「経営の現地化」。要するに、意思決定を含めたいろいろなことを現地で決めて、経営のスピードをアップさせようというものです。そのためには、現地のことをよく知り、マネジメントがうまくできる優秀なローカル人材が必要です。
ですが、いま日系企業には優秀な人材が集まってきません。日系企業は人気がないのです。なぜなのでしょうか?
理由のひとつは、これまでの日系企業の現地スタッフの活用方法にあります。おおかたの日系企業は、いままで現地の経営を日本人中心に考え、現地スタッフをオペレーターのようにしか活用してこなかったのです。また、その日本人も5年もすれば日本に帰国し、その後は後任者が一からやり直すということが繰り返されてきました。
これでは現地スタッフのモチベーションが上がるはずもありません。結果、会社を退職する、あるいは会社にとどまっても一定の範囲の仕事以外は行わない社員が増えてしまいました。
この状況に危機感を抱いた経営者は、現地人材の本社幹部への登用を真剣に考え始めています。
ある企業では、現地トップや次期役員候補を外国人に変更しています。トップが外国人ですから、その会社の人たちの考え方や制度は当然、外国企業と変わりません。
また、別の企業のこんな例もあります。この会社はグローバルの幹部研修をシンガポールなどで行っています。人種に関係なく、世界中から幹部候補生を集めて行われるこの研修の場に参加する日本人の比率は3割程度。まだ始まって間もない制度なので「3割」ですが、将来的にはその比率はもっと下がっていくのではないでしょうか。
このように、いま日系企業では「アジア人材」の活用を本気で考えており、アジア人の人事評価はインフレ傾向にあります。これは翻って言えば、10年後には「日本人」の幹部ポストが半減する可能性を含んでいるということです。