海外で使いものにならなければ“社内失業”のおそれも

 いま日本企業は、本社機能の海外移転も進めています。その目的は、現地ですばやく意思決定を行って、外国勢に負けないスピードで経営を行うこと。いわゆる「グローカリゼーション」と呼ばれているもので、海外にミニ本社を作るようなイメージです。

 具体的には、主要な役員の派遣やその判断をサポートする経営企画、経理、財務、人事といったコーポレート機能を海外に移そうと企画しています。

 また、これと同時に考えられているのは日本本社のスリム化。海外に本社機能を移転すれば、当然のことながら日本に同じ機能を残しておく必要がなくなるからです。

 こうなると、いままで日本の本社から海外子会社を指導する立場にあった人が海外に行くことができなければ、ポジションに見合った仕事をこなすことができず、“社内失業”という憂き目に遭うおそれもあります。

 本社の「機能」のみを海外に移すならまだしも、会社によっては本社そのものを海外に移そうと本気で考えているところもあります。このような傾向は、以前は相続税の問題を控えた中堅オーナー企業に多く見られたものでした。日本は相続税が非常に高いため、節税目的で本社をシンガポールに移してしまおうという考えです。

 ところが最近では、名だたる大企業までもが真剣にこれを検討しています。事業の主軸が海外に移ってしまったため、本社もビジネスの主戦場である海外に移そうというわけです(以下の事例参照)。

  人口減少や円高などの要因を抱える日本では、以上に述べてきたような動きがいっそう加速するものと予想されます。

 そんな状況下、国内派を決め込んでいた人に突如として海外行きの辞令が出る可能性も日に日に増してきています。また海外に出られない場合は、社内でのポジションが見つけにくくなってきているのです。

※次回は6月28日(木)に配信予定です。