過去に本欄でも取り上げたが、「成果主義」を名乗る報酬制度には二つのタイプがある。
まず、主に外資系企業で採用されているもので、利益に対する貢献を評価しこれに連動して報酬を支払うタイプのものだ。原則として上限はない。「たくさん稼いでくれれば、(喜んで)たくさん払います」という思想なので、筆者は「陽気な成果主義」と呼ぶ。これが、本来の成果主義だ。
対して、日本の大手企業で多く導入されたのは、社員の目標達成度合いをグループ単位で相対評価して、ボーナスに相対的な差をつける制度で、金額の差は小さく、概して払いは渋い。こちらの思想は「おカネでも差がつくのだから、頑張れ」であり、相対評価の差を強調して社員を競争に駆り立てる社員管理の道具なので「陰気な成果主義」の名がふさわしい。
また、経営システムとして、利益に応じて報酬も経営資源も分配されることの多い「陽気な成果主義」は、分散処理的で柔軟性が高い。一方、部門単位・部署単位の目標を全社の目標に統合していく「陰気な成果主義」は中央集権的な情報処理と意思決定になるので、経営資源の配分が硬直的で柔軟性に乏しい弱点があった。
報酬の大きな変動と個人間の格差を精神的に受け入れられるかという問題はあるが、「陽気な成果主義」は、陽気で柔軟だし、局地的な競争に強かった。これに対して、「陰気な成果主義」は社内エリート的な人材にとってリスクが小さくて好都合だということを除くと、ほとんど長所がなかった。
実際に、「(陰気な)成果主義」を導入したものの、その後これをやめてしまった会社も複数あった。